再エネ・再点検(中)陸上風力、撤退の連鎖 資材高や地元住民の反発響く - 日本経済新聞
資材高と地元住民の反発により陸上風力発電事業からの撤退が相次いでいる状況を報じる記事
専門家の視点
陸上風力の撤退連鎖は、物語先走りの典型例です。日本の再エネ拡大という壮大なビジョンに対し、資材高と住民反対という物理的・社会的な実体が追いついていない状況です。ここでの構造的論点は、事業リスクを誰が負うのかという実行レイヤーの欠落です。発電事業者は収益性の不確実性を、住民は生活環境の変化を、それぞれ個別に負担しており、両者を橋渡しする制度設計が不在のままです。 隠れた前提への問い直しとして、欧州のように陸上風力を「地域のインフラ」と位置づけ、住民が事業の受益者となる仕組みを導入する選択肢があります。日本では発電所が「外部からの迷惑施設」として扱われがちですが、これは固定価格買取制度が生んだ所有構造の歪みです。住民が太陽光発電のように自ら出資するモデルを陸上風力にも適用すれば、反発は緩和します。 次の観測点は、コスト上昇を織り込んだ事業計画と、協議会方式による住民合意の実績です。時間軸で言えば、資材高は循環的な変動であり、本質的な問題は合意形成コストの高止まりです。陸上風力の将来は、技術より地域共生の設計力が決めます。日本はその制度翻訳が遅れている段階です。