グリーン水素製造用の素材、AGCが投資中断 脱炭素後退 - 日本経済新聞
AGCがグリーン水素製造用のイオン交換膜生産設備への投資を需要予測の下振れにより中断し、脱炭素事業の後退が示された。
専門家の視点
実体は、AGCが150億円規模のイオン交換膜生産設備投資を中断したという事実です。背景には、グリーン水素需要の予測下ぶれがあります。ここで重要なのは、需要予測の下ぶれが単なる一時的な景気変動ではなく、水素のコスト競争力が未だに化石燃料由来の水素に届いていないという構造的な制約を反映している点です。物語は、脱炭素後退という短期的なフレーミングに傾きがちですが、実際は水素市場の「実体」が「物語」の壮大さに追いついていないことを示しています。期待は、各国政府や投資家が掲げるグリーン水素ビジョンが先行し、企業の個別投資判断がその速度に合わせられなくなった結果でしょう。隠れた前提は、水素需要が政策主導で確実に立ち上がるという見方です。しかし、現状では供給サイドの技術開発競争が過熱する一方、需要創出策の執行が遅れており、この非対称性が今回の中断を招いたと言えます。次の観測点は、AGCがこの中断を一時的と見るか、戦略的な撤退と見るかであり、その判断が日本企業の水素事業全体への信頼を左右します。時間軸で見ると、この投資中断は可逆的ですが、再開には需要の確実な裏付けが必要です。