公共交通の利用率向上、脱炭素にも貢献 加藤博和氏 - 日本経済新聞
人口減少に対応した都市構造転換やMaaSの活用により公共交通の脱炭素化を推進する必要性を論じている。
専門家の視点
公共交通の脱炭素化において、乗車人数の増加が本質的な効果をもたらすという指摘は、技術革新頼みの対策に対する現実的な修正です。CO2排出量が乗客数で割られる以上、空気を運ぶ電車やバスは環境負荷が割高になるという物理的な事実があります。ここでの構造的な論点は、人口減少局面で都市構造をコンパクト化し、移動需要自体を減らすという長期的な課題と、短期的なMaaS導入による利便性向上が、時間軸の異なる取り組みとして同居している点です。 制度面では、MaaSの普及が都市部の過当競争を招き、地方部の公共交通をさらに衰退させる可能性も否定できません。実行レイヤーを見ると、自治体の交通政策担当者の人員不足や、地域事業者のデジタル化投資余力の問題が、具体策の足かせになっています。隠れた前提は「公共交通の利用が増えれば、環境に良い」という図式ですが、自家用車からの移行が前提にあり、徒歩や自転車への転換を促す施策との整合性が問われます。 今回の指摘は、実体が翻訳されていない構造です。数値目標や技術ロードマップよりも、乗車密度と都市計画の連動という地味な指標を、政策評価の中心に据える必要があります。