2026年5月5日 モビリティ・電機・情報通信 - 日刊工業新聞
脱炭素や循環型経済に加え、自然再生(ネイチャーポジティブ)が新たな経営課題として浮上しており、企業のリスク回避や調達戦略に影響を与える動きを伝えている。
専門家の視点
調達・機会損失リスクを回避するための自然再生への経営シフトは、明らかな実体の変化です。企業がサプライチェーン全体での環境負荷を問われ、自然資本への依存度が高い業種では、対応が遅れれば調達困難や投資家離れという経済的損失に直結します。この点で、実体はすでに企業の競争条件に組み込まれています。しかし、物語の側面では、ネイチャーポジティブの具体的な経路と検証指標が示されていないのが現状です。脱炭素のような排出量の数値目標は設定しやすい一方、生物多様性の回復は測定が難しく、何をもって「自然再生」と判断するか曖昧なままです。つまり、実体が先行しながら、それを説明する物語が追いついていない構造です。期待としては、投資家や市民はネイチャーポジティブへの関心を高めており、市場は走り気味です。ただし、この期待は企業の実践よりも言葉の上での宣言に反応している側面が強く、期待先行の危うさも内包しています。次に見るべき観測点は、企業が開示する自然関連の指標が、単なるリスク回避のための形式的なものか、実際の生態系回復につながる行動と紐づいているかです。