九電みらいエナジー、地熱由来の電力 ニチレイに供給 - 日本経済新聞
九電みらいエナジーが地熱由来の電力をニチレイに供給する事例
専門家の視点
地熱由来電力の長期供給契約は、再生可能エネルギーのなかでも安定稼働が可能なベースロード電源として、産業需要家にとって極めて有効な選択肢です。太陽光や風力と異なり天候に左右されないため、実体としての供給信頼性は高い一方、開発リードタイムの長さと初期投資の大きさが導入障壁となっています。今回の契約は、そうした実体を大手食品企業の需要家が評価した点で、物語と実体のズレが小さくなった事例です。むしろ課題は、資源量はあるものの開発が進まない国内の地熱事業全体にあります。規制や温泉利権などの手続きの非対称性が、実証段階から事業化への移行を遅らせており、この契約一件では業界構造の変化には至りません。次の観測点は、ニチレイがこの電力を使った製品をどう消費者に説明するかです。供給側の努力だけでは市場全体の期待は醸成されず、需要側の価値訴求が継続的な投資を呼び込む鍵を握ります。地熱は再エネの救世主ではなく、安定供給という当たり前の価値を再評価する動きの先頭例です。日本は資源を持て余したまま、契約単位でしか前進できない構造を直視する必要があります。