三菱商事、天然ガスに回帰 中東緊迫で揺らぐ脱炭素 - 日本経済新聞
三菱商事が、中東情勢の緊迫化を背景に一時後退していた天然ガス事業へ再び注力する方針を示し、脱炭素への取り組みが揺れ動くことを報じる記事。
専門家の視点
天然ガス回帰という見出しが指す実体は、中東情勢による供給不安と価格変動リスクの高まりです。三菱商事が液化天然ガス(LNG)事業への関与を強める背景には、短期的な収益確保と電力需給の逼迫対策という経済合理性があります。一方で、脱炭素宣言という物語は長期的なカーボンニュートラル目標に紐づいており、この両者の時間軸が構造的にズレています。 物語先走りの構造です。企業は2050年ネットゼロというビジョンを掲げつつ、足元のエネルギー安全保障という実体に押されて天然ガスという移行燃料へ回帰します。この行動自体は合理的ですが、投資家や市民から見れば「脱炭素へのコミットメントが後退した」と映ります。実行レイヤーの欠缺も明確で、LNGの新規需要創出と既存資産の排出削減を同時に進める人材とKPIが整っていません。 隠れた前提は「天然ガスは移行燃料として許容される」という考え方です。しかしメタン漏洩の実態や再生可能エネルギーのコスト低下を踏まえれば、この前提はすでに崩れつつあります。観測点は、三菱商事がLNGのカーボンオフセットやアンモニア混焼の具体的な工程表を公表できるかどうかです。