【インタビュー】AI、脱炭素、防衛で争奪戦の重要鉱物~世界シェア3割の中南米を取り込むには…
専門家の視点
中南米の重要鉱物開発を巡るIDB総裁の発言は、技術と資金が先に語られ、投資環境を整える政府側の条件づくりが後回しにされている構造です。インタビューではリチウム、レアアース、銅という具体的な鉱種とアルゼンチン、ブラジル、チリという国名が示され、分離技術や製錬技術の高度さが強調されます。しかし、なぜ生産が進まなかったのかという問いに対して、インフラ、法の支配、規制といった公的部門の課題は挙げるものの、その解決の具体的な工程や期限は示されていません。投資需要60億ドル、最大120億ドルという数字は計画段階の規模であり、実際の資金供給がどの程度実行されているかは不明瞭です。日本企業の関心は「調達先の多角化」という輸入側の論理で語られ、現地での共同生産という実体を伴う投資の具体的な案件には踏み込んでいません。規制緩和の方向性についても「現在は市場に開かれたアプローチへ向かっている」という現状認識だけで、過去の厳しいルールが復活しない保証は何もありません。この構造は、資源獲得への期待が先行し、投資環境の整備という時間のかかる制度的な部分が説明不足のままです。
──技術についてですが、例えばどのような技術が必要とされているのか、もう少し詳しく教えてください。IDB総裁)重要鉱物ごとに必要な技術は異なります。例えば、「分離技術」。役に立つ部分とそうでない部分を切り離し、取り出す技術が必要です。この分離技術は極めて高度で、世界でも簡単には手に入りません。ですから、そうした技術を持ち込む必要がある、というのが一例です。もう1つの例として、銅を加工・製錬する際、高付加価値化するには新たな技術が必要になります。日本にはそうした技術や資金を中南米に持ち込み、重要鉱物を共同生産していけるだけの力があります。──中南米のどの国の、どのような鉱物が、日本との協力の可能性があるとお考えですか。IDB総裁)わかりやすい例を挙げましょう。まずは「リチウム」です。例えばアルゼンチンではリチウム事業に融資する共同プロジェクトを日本と立ち上げています。我々は共同で、リチウムの増産を実現しつつあります。ブラジルでは「レアアース」の抽出に向けて、どこにレアアースが存在するのかを特定して採掘につなげられるよう政府を支援しています。ご指摘のとおり、潜在力はあるのに、まだ十分に生産されていない分野ですので、だからこそ取り組む必要があります。そして最後に「銅」です。チリの銅、アルゼンチンの銅。ボリビアにも鉱物資源があります。これらが日本と連携していく主要な国々です。中南米には他にも資源を持つ国はありますが、日本と組む相手としては中心となるのはこれらの国々です。 ──今まで重要鉱物の生産が十分進んでこなかった理由として、先ほど挙げられた技術や資金以外にも、中南米の「財政不安」や「インフラの遅れ」などが外国企業から見て障害になっていた可能性についてお聞かせください。IDB総裁)公的部門と民間部門があり、今話しているのは民間部門、つまり資金・技術・投資の話です。しかし同時に、民間部門が参入するためにはそれを可能にする条件--「インフラ」、「法の支配」、「安定性」、「規制」--が必要です。これらはすべて政府と取り組まねばならないことで、IDBはまさに政府との長年の経験があります。IDBは企業とともに投資し、また政府や公的部門とも協働しているのです。どのような介入が必要かと言えば、輸出を可能にするインフラの整備、道路、実施能力、制度設計、規制機関--こうしたものすべてです。そしてもちろん「国の安定性」と「市場の安定性」が求められます。──参入のための障害を取り除き、日本企業にとって良い条件を整えられるという自信はありますか。IDB総裁)はい。ご参考までに申し上げると、現在、私たちの投資案件は非常に大きなものです。IDBだけでも投資需要は60億ドルあり、最大120億ドルに達する可能性があります。つまり、すでに動き始めているのです。アルゼンチンの「リンコン」リチウム事業など、中南米・カリブ地域ではすでに多くの協働が進んでいます。そして同地域はすでに1800億ドルの鉱物を輸出しています。──リチウム資源の共同開発について、資金や技術の提供に加えて、銅鉱山やリチウム資源を共同で開発する可能性はありますか。IDB総裁)あらゆる形の投資を中南米地域は歓迎します。私が「投資」と言う時、それは「共同で鉱山をつくり、現地に行って現地で生産する」ことを意味しています。それが投資です。投資とは資金供給だけではありません。投資とは実体を伴うもの--現地に行き、人を雇い、機械を組み上げ、会社をつくる、それらすべてです。それこそが私たちに必要な本当の投資です。──そうした共同開発に実際に関心を示す声を、すでに日本企業から聞いていますか。IDB総裁)私たちが今耳にしているのは、「鉱物の調達先を多角化したい」という関心の声です。それは非常に強く感じています。エネルギー分野や先進技術分野で鉱物需要が急拡大しているため、現時点ではそれが、日本への鉱物輸入という形になって表れています。──外国企業にとって不利な規制や、輸出で得た外貨を国内に還流させなくてはいけないルールがかつてあったと聞いていますが、「外国企業に厳しいルールは復活しない」と安心してよいのでしょうか。IDB総裁)外国投資家に対する規制が厳しかったとは思いません。外国投資家は非常に歓迎されてきました。かつては国内調達比率をより重視していた国や地域もありましたが、現在はより市場に開かれたアプローチへと向かっています。そして、市場重視へと舵を切った国々はどこも規制緩和を進めているところです。
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