【日本】量子科学技術研究開発機構と東芝、ITERのTFコイル通電資源に初成功
専門家の視点
核融合炉ITERの最重要機器であるTFコイルで、日本が製作を担当した機体が実運転環境と同じ極低温下で初めて1万アンペアまでの通電に成功しました。これは2023年の全9機製作完了から、実際の建設サイトでのシステム検証という実行段階へ進んだことを示す画期的な事実です。今回の記事で確認できるのは、室温から極低温への冷却、超伝導状態の確認、大電流の安定通電、ジョイント部の抵抗発熱量や冷媒流動特性が設計想定内だったこと、そして漏えいなどの不具合がなかったことです。 この成功の重みは、ひずみに敏感なニオブスズ導体で大型コイルを製造する方法の妥当性が実証された点にあります。設計値と実測値の一致は、15年に及ぶ製造プロセスの信頼性を裏付けるものです。一方で、記事が強調するのは「システムとしての信頼性向上」と「運転開始への前進」という物語であり、今後の統合試験運転で何が課題として抽出されるかはまだ明示されていません。 今後の観測点は、残る10機のTFコイルを含む超伝導マグネットシステム全体の統合コミッショニングです。今回の実証は部分的な成功であり、システム全体としての整合性確認が次の関門になります。
2026年8月25日 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST) 株式会社 東芝 量子科学技術研究開発機構(以下「QST」)および株式会社東芝(以下「東芝」)が製作した世界最大級の超伝導※1トロイダル磁場コイル(以下「TFコイル」)について、核融合実験炉ITER※2の建設サイトにおいて実際の運転環境を想定した極低温環境(摂氏マイナス269度)で通電試験に成功し、ITERの運転開始に向けて大きく前進しました。 TFコイルは、プラズマを閉じ込めるための強力な磁場を発生させる最重要機器の一つです。ITERの運転開始に向けて、電源装置および冷却プラントと連携した試験を行うことにより、システムとしての信頼性を向上させることは、ITERの成否を左右する重要な技術課題の一つです。本試験では、ITER国際核融合エネルギー機構(以下「ITER機構」)と協力してTFコイルを室温から極低温まで冷却し、超伝導状態になること、および超伝導状態で初めて1万アンペアまでの大電流を安定して通電することを確認しました。これは、TFコイルとして初の実証事例です。これにより、ひずみに対して敏感なニオブスズ超伝導導体を用いて大型コイルを製造する方法の妥当性を確認しました。また、極低温環境での安定した運転を確実にするために必要な情報であるジョイント部の抵抗発熱量および極低温下における冷媒の流動特性を取得し、いずれも設計時の想定範囲内の値であることを確認しました。さらに、極低温への冷却や1万アンペアの通電による冷媒の漏えいなどの不具合はなく、TFコイルの健全性が確認されました。 本試験の実施に当たっては、QSTから派遣されたTFコイル技術担当者が、TFコイルの製作で培った知見を基にITER機構と協力し、試験計画の策定を主導するなど、その実現に重要な貢献を果たしました。 今回の成果は、日本がフュージョンエネルギー開発において、世界最高水準の大型超伝導コイル基盤技術を有していることを示すものです。さらに、本試験はITER超伝導コイルシステムの統合試験運転(コミッショニング)に向けて、運転手順の確立、運転員の訓練、および課題の抽出によるリスク低減に寄与するものであり、ITER計画の運転開始に向けた大きな前進となりました。 図1. 試験装置に設置された超伝導トロイダル磁場コイル 核融合実験炉ITERの超伝導マグネットシステムは、直径約30メートル、重量約1万トンに及ぶ巨大なシステムであり、その中で周方向に18機をドーナツ状に配置するD型コイルがTFコイルです(図2)。TFコイルは、プラズマを閉じ込めるための強力な磁場を生成する中核機器であり、その信頼性はITER全体の成立性を左右する最重要要素の一つとなっています。日本は、TF導体の25%、全19機分のTF構造物、および9機のTFコイルの製作を担当しました。 TFコイルは、高さ16.5メートル、幅9.2メートル、重量310トンの巨大な超伝導コイルです。コイルは、最大磁場11.8テスラを発生させる巻線部と、直線部に作用する最大約6万トンに及ぶ電磁力を支持する構造物から構成されています(図3)。巻線部は、「ダブル・パンケーキ」と呼ばれる2層構造の巻線を7枚積層した構造であり、各ダブル・パンケーキは、D型に巻かれた超伝導導体と、その導体を収める溝を有するラジアル・プレートから成ります。TFコイルに使用されるニオブ3スズ超伝導導体は、ITER参加極のうち日本、欧州、韓国、米国、ロシア、中国で製作されました。各国で製作された導体および日本が全19機を製作した構造物は、日本および欧州のTFコイル製作拠点に輸送され、TFコイルの製作に用いられました。 日本は2008年にITER機構とTFコイルの調達取決めを締結し、QSTは産業界と連携して約15年にわたりTFコイルの開発を進め、2023年に全9機のTFコイルの製作を完遂しました(図4)。TFコイルは当初、その実現が困難と指摘されていましたが、日本の研究機関と産業界の多くの関係者が、フュージョンエネルギーの実現に向けた強い情熱と使命感のもと、この挑戦に取り組んできました。その過程では、巨大構造物でありながらミリメートル精度を要求される製作技術、11.8テスラの強磁場下で6万8千アンペアの大電流を安定に流す超伝導技術、さらに耐放射線性を有する電気絶縁材料の開発など、多くの困難な課題に直面しましたが、それらを一つ一つ着実に克服しました。 このようにTFコイルの開発は、単なる装置製作にとどまらず、超大型・高精度・極低温・大電流・強磁場という複合的な技術領域を融合した総合工学的挑戦でした。その成果は、ITER計画の進展に不可欠であると同時に、将来のフュージョンエネルギー開発に向けた基盤技術と
本文は配信元の記事から取得した抜粋です。
配信元の記事を読む →