容量市場とGX-ETS】GX-ETS費用を他市場収益に反映 無償枠売却益は脱炭素投資なら控除不要案
専門家の視点
GX-ETSの費用と収益を容量市場の応札額にどう織り込むかという制度設計の細部は、市場メカニズムの整合性を保つための技術的調整です。排出枠費用を限界費用へ反映する一方で、その費用が市場価格に反映されていない場合は限界費用側にも追加しないという整理は、二重計上を避ける合理的な整合性の確保といえます。ここでの核心は、無償枠の売却益を控除しない代わりに、脱炭素投資へのコミットメントを求めるという条件付き優遇の設計です。この仕組みは、事業者にとって容量収入を維持しやすいメリットを生む一方、コミットメントの未履行時における具体的な措置が未確定のままという非対称な構造を内包します。監視委員会が指摘したとおり、優遇を与える以上は不履行時の扱いを先に明確にすべきであり、現時点では「優遇だけ先に決まり、罰則は後回し」という時間差が生じています。次の観測点は、未履行時の措置の具体化と、排出枠費用の反映による応札額の上昇がどの程度需要家コストへ転嫁されるかです。
経済産業省・資源エネルギー庁は、2026年7月29日、第5回電力安定供給ワーキンググループを開催し、排出量取引制度(GX-ETS)で発生する費用と収益を容量市場の応札価格にどう反映するかを審議しました。事務局は、排出枠取得費用を他市場収益の算定に織り込む一方、無償割当された排出枠の売却益は、将来の義務達成や脱炭素投資への活用を約束する場合、応札額から控除しない案を示しました。 GX推進法に基づく排出量取引制度は2026年度に開始し、2027年度から排出枠の割当てと市場取引が始まる予定です。前日に開かれた第2回電力事業環境整備ワーキンググループでは、発電に伴う排出枠費用をスポット市場などの入札価格へ反映し、無償枠の売却益は一定のコミットメントを条件に入札価格から控除しない方向で議論されました。 容量市場では、電源維持に必要な費用から、卸市場や非化石価値取引などで見込む「他市場収益」を差し引いて応札額を算定します。排出枠の取得費用は発電量に応じて変動する可変費であり、卸市場の限界費用を押し上げて他市場収益を変化させます。このため、卸取引でのGX-ETSの扱いに準じて限界費用へ反映し、容量市場の他市場収益を算定する案が提示されました。 ただし、将来予測や過去実績に用いる市場価格が排出枠コストを織り込んでいない場合は、限界費用側にも反映しない考えです。市場価格と費用の前提をそろえ、排出枠費用だけを追加して他市場収益を過小評価することを避けます。具体的な炭素価格、排出係数、稼働量の想定方法は今回決まっていません。 無償割当された排出枠を市場で売却すれば、発電事業者に収益が生じます。しかし、その収益を将来の排出義務の履行や脱炭素投資へ充てる場合、既存電源の維持費を補う収益とは異なるとして、容量市場の応札額から控除しない案です。事務局は、この整理を2026年度メインオークションから適用することを提案しました。同オークションは2030年度の実需給を対象とします。 委員から目立った反対意見は出ませんでしたが、電力・ガス取引監視等委員会事務局は、控除不要というメリットを与える以上、事業者がコミットメントを履行しなかった場合の取扱いをあらかじめ明確にすべきだと指摘しました。事務局は関係会合の議論を踏まえて検討を続ける考えを示しており、未履行時の具体的な措置は継続審議です。 火力発電事業者は今後、燃料費に加え、排出係数、想定稼働率、排出枠価格、市場価格との整合を容量市場の応札モデルに組み込む必要があります。無償枠売却益の控除が不要となれば容量収入を維持しやすく、脱炭素設備への投資原資を確保できる可能性があります。 一方、コミットメントの履行確認が厳格化すれば、金融機関との融資契約、投資計画、証憑管理にも影響します。排出枠費用の反映によって他市場収益の見込みが低下すれば、応札額を押し上げ、容量拠出金を負担する小売電気事業者や需要家のコストに波及する可能性があります。今回、容量市場の募集量、上限価格、ペナルティーの変更は決定していません。 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 第5回電力安定供給ワーキンググループ
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