リコーなど環境先進237社、政府に「化石燃料依存からの脱却」求める
専門家の視点
エネルギー安全保障と脱炭素の一体化を求める意見書は、国家の資源戦略と企業の経営戦略という異なる時間軸を持つ二つの意思決定を、一つの政策パッケージに束ねようとする試みです。事実として確認できるのは、237社という規模の企業連合が、ホルムズ海峡危機を機に構造的課題としての化石燃料依存を政府に提示した点です。一方で、浮体式洋上風力の産業化や電力系統の強化など5つの重点分野は、具体的な実行主体、投資規模、導入スケジュールが示されておらず、政策提言の段階にとどまっています。約25兆円という燃料輸入額は、構造的な負担の大きさを数値で裏付ける一方、このコストと再エネ導入投資の間にどのような費用対効果の比較があるのかは記事からは見えません。過去のエネルギー多角化が依存構造を変えなかったという指摘は、多様化という目的と安全保障という結果が必ずしも一致しなかった教訓ですが、今回の提言も同じ過ちを繰り返さないためには、重点分野ごとに測定可能なKPIと撤退条件を政策に組み込むことが不可欠です。
脱炭素経営を推進する業界団体「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」はこのほど、ホルムズ海峡周辺の緊張による原油・ガス価格の高騰を受け、政府に対する意見書を公表した。意見書では、エネルギー安全保障と脱炭素を一体で進める政策への転換が必要だと訴えた。日本のエネルギー供給の脆弱性は、一時的な問題ではなく、「化石燃料への過度な依存」という構造的な課題に起因すると指摘した。(オルタナ輪番編集長=池田真隆) JCLPは、気候変動対策を経営戦略に位置付ける企業から成る組織だ。リコーや戸田建設、セブン&アイ・ホールディングスなど237社が加盟する。 今回の意見書では、ホルムズ海峡の封鎖リスクによって日本のエネルギー供給の脆弱性が浮き彫りになったと指摘した。エネルギー供給の脆弱性について、一時的な問題ではなく、「化石燃料への過度な依存」という構造的な課題に起因するとした。 日本は一次エネルギーの約8割を海外から輸入する化石燃料に依存する。年間で約25兆円を燃料の輸入に支払っており、エネルギー価格の高騰や地政学リスクは、家計や企業活動、財政にも大きな影響を及ぼす。 これまで日本は、石油危機を契機に原子力や天然ガスなどを組み合わせる「エネルギー多角化」を進めてきた。しかしJCLPは、その結果としてエネルギー源は多様化したものの、海外の化石燃料に依存する基本構造は変わっておらず、今回の危機でもその脆弱性が露呈したと分析した。 一方、近年のエネルギー自給率の改善を支えてきたのは、再生可能エネルギーの導入拡大だったと評価した。エネルギー消費を減らす省エネルギーの推進も、自給率向上とエネルギー安全保障の強化に欠かせないとした。 ■ZEVや浮体式洋上風力などを重点分野に JCLPは、今後重点的に取り組むべき分野として、住宅・建築物の断熱性能向上、ZEV(ゼロエミッション車)と充電インフラの整備、太陽光発電のさらなる導入、浮体式洋上風力発電の産業化、そして再エネ導入を支える送配電網など電力系統の強化という5つの重点分野を提言した。 同団体は、高市政権が検討を進める「エネルギー需給構造強靱化のための総合パッケージ」は、日本のエネルギー政策を見直す重要な機会だと位置付ける。 短期的な燃料確保にとどまらず、化石燃料依存から脱却する中長期的な戦略へと転換することが、エネルギー安全保障の強化と気候変動対策の両立につながると強調した。 株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。
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