世界の脱炭素化動向(1)世界のEV市場に変容の兆し
専門家の視点
世界のEV市場は、中国と米国の鈍化と、欧州・東南アジア・中南米の成長という明確な二極化を示しています。2025年の世界販売は前年比20%増の2,000万台超で、新車販売の4分の1を占めるまで成長しました。しかし、2026年第1四半期には前年同期比8%減の390万台へと反転し、中国の補助金縮小と米国の税制優遇撤廃が直接の引き金になっています。この構図で重要なのは、市場成長の主役が「政策支援による需要創出」から「価格競争力とエネルギー安全保障」へ移りつつある点です。中国製の安価なEV流入が東南アジア市場を倍増させ、中東情勢による原油高がEVシフトの追い風になるという構造は、補助金に依存しない自律的成長の可能性を示します。一方で、イエテロが指摘するように、IEAは2026年の販売を約2,300万台と予測しますが、この数字は欧州の規制強化と新興市場の拡大が前提です。燃料税減税や電気料金高騰が起これば、インセンティブは急速に弱まるという条件付きの見通しです。
このページではjavascriptを使用しています。 2025年も世界のEV市場は成長したが、世界市場を牽引してきた中国とEV補助政策が転換された米国では、2026年に入り販売台数が減少している。一方、二酸化炭素(CO2)排出基準が引き上げられた欧州や、東南アジアなど新興市場では成長が続く見込みだ。さらに、2026年に入ってからは中東情勢悪化によるエネルギー危機も受け、中国・欧州・米国の3大市場がリードしてきた世界のEV市場に、成長市場や販売先、主力種のほか脱炭素化手法の広がりを伴う変容の兆しが出ている。本稿では、中国をはじめとする各国・地域のEV市場の最新動向を整理する。 国際エネルギー機関(IEA)の「世界EV見通し2026」によれば、2025年の世界のEV(注1)新車販売台数(乗用車のみ)は、前年から20%増加して2,000万台を突破した(図1参照)。世界の新車販売台数の4分の1をEVが占める計算となる(2026年5月22日付ビジネス短信参照)。 主要国・地域における販売台数は、中国が1,330万台で最多だが、前年比の伸び率は2割弱となり、前年(約4割増)から低下した。欧州は2025年からの新車販売における二酸化炭素(CO2)排出基準引き上げに加え、一部の国でのEV購入補助金の再導入や継続も後押しし、前年比3割増の420万台となった。米国はEV購入への税額控除撤廃などの政策転換を受け、前年からほぼ横ばいの153万台にとどまった。 注:2035年のデータは現行の政策に基づくIEAの予測値。 出所:IEA “Global EV Outlook 2026”からジェトロ作成 中国・欧州・米国の3大市場が依然として約9割のシェアを占めるEV市場だが、新興市場も台頭している。2025年の3大市場以外の国・地域におけるEV販売台数は、前年の130万台から200万台に増加した。特に東南アジアでは増加が顕著で、2025年の販売台数は前年比で倍増し、50万台に達した。中でも、国産メーカーVinFastを有するベトナムや、中国からの輸入免税制度など有利な条件が整うタイ、インドネシアが増加を牽引した。後述のように、中国市場から安価なEVが流入してきていることが、EV販売台数増加につながっている。 また、中南米も前年比で75%増加し、約35万台に到達した。ブラジルとメキシコでの増加が主因で、プラグインハイブリッド車(PHEV)が占める割合が高くなっている。中東でも、前年比約4割超増の約7万5,000台となった。同地域の主要販売国であるUAEに加え、サウジアラビアやカタールでの伸びも大きい。また、EV販売規模が拡大し始めた2020年ごろはテスラが優勢だったのに対し、2025年時点では同社のシェアは低下し、代わりに比亜迪(BYD)のシェアが上昇している。 2026年に入り、国・地域によりEV販売動向の明暗が分かれている。IEAの同見通しによると、2026年第1四半期のEV販売台数は前年同期比8%減の390万台だった。中国のEV下取り制度改定とEV購入税優遇措置の縮小、米国のEV関連政策の縮小が世界全体の減少に影響した。一方で、欧州(前年同期比約3割増)や東南アジア(同約8割増)、中南米(同約75%増)では増加している。IEAは、2026年の世界の販売台数は約2,300万台に到達すると予測しており、特に欧州と新興市場での伸びが大きいと見込んでいる。 また、中東情勢を受けた原油価格高騰を機に、EV市場の成長が加速する可能性もIEAは示唆している。例えば、石油燃料依存の解消策として、タイではEV購入向けの低金利ローンや旧車下取り制度などの導入が検討されている(2026年5月7日付ビジネス短信参照)。一方、燃料税の減税や補助金導入、電気料金の急激な上昇が生じれば、EV購入のインセンティブは弱まる可能性もあるとしている。エネルギー危機も相まって、2026年以降のEV市場の再編が進む可能性がある。 EV市場の変化は、販売先だけではなく、環境対応車の車種別輸出動向にも表れている。2025年の環境対応車(BEV、HEV、PHEVの総称)の輸出を見ると、世界のEV需要を牽引してきたバッテリー式電気自動車(BEV)に加え、ハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)も勢いを増している。これら3種を合計した環境対応車が乗用車の輸出総額に占める割合は42.0%で、3品目のHSコードが新設された2017年以降で最高となった(図2参照)。環境対応車の輸出総額に占める割合は、BEVが38.9%で最多だが、HEV(37.2%)が1.7ポイント差に迫る。世界のHEV輸出額の半数近くを占めるEUの輸出額は、27.0%増の703億ドルとなり、前年(0.5%増)から伸びが
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