令和7年度(2025年度)先進的CCS事業成果報告会
専門家の視点
CCS事業は、CO2の分離回収・輸送・貯留という一連の技術実証から、実際の事業化への移行段階にあります。報告会で共有されたのは「技術的検討」や「進展状況」であり、具体的なCO2貯留量やコスト削減の数値目標は示されていません。ここに三層の構造的なズレがあります。物語は「2050年カーボンニュートラル実現」という長期ビジョンですが、実体は2026年度も「不確実性の低減」を目的とした調査段階に留まっており、物語先走りの傾向があります。また、船舶輸送のクラスター化支援は排出事業者の地理的集約が前提ですが、企業間の連携や合意形成の実行レイヤーについて具体的な記述がなく、実体がまだ翻訳されていない状況です。隠れた前提は「CCSが温暖化対策の切り札として社会に受容される」という点ですが、貯留地の住民合意や長期モニタリングの制度的枠組みは未整備のまま、期待先行で事業が進んでいます。次の観測点は、2026年度の調査で示されるコスト見通しと、クラスター化候補の排出事業者の具体的な組み合わせです。
JOGMECはCCS事業の普及と拡大に向けた支援を目的とした「先進的CCS事業」を2023年度に開始しました。この事業は、CO2の分離回収・輸送・貯留に関する調査を実施し、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けたCCSの展開に寄与するもので、2025年度は前年度から継続している9案件の調査を行ってきました。 報告会では、各案件の担当事業者から成果報告が行われました。各事業者からは、多様な観点から技術的検討や事業化に向けた取組や進展状況が共有されました。 また、JOGMECからは先進的CCS事業の概要や2025年度の成果の総括および今後の先進的CCS事業の推進に向けた取り組みを紹介しました。 会場の参加者からは多くの質問や意見が寄せられ、活発な議論が行われました。あらためてCCS事業への関心の高さを実感する機会となりました。 なお2026年度は、これまで進めてきた9案件のうちの一部について引き続いてCCSコストや地下貯留に係る不確実性の低減を図ることを目的とした調査を進めるほか、CO2の船舶輸送を伴うCCS事業の実現に向け、地理的に近接する排出事業者の集約(クラスター化)によるコスト低減を目指した支援を行ってまいります。 遠方よりお越しいただいた方も含む多くの参加者の皆様、ならびに本報告会の関係者の皆様には心より御礼申し上げます。 今後とも、CCS事業の着実な推進を通じて、我が国のカーボンニュートラル実現に貢献してまいります。 PDF形式のファイルをご覧いただくには、アドビシステムズ社から無償配布されているAdobe Readerプラグインが必要です。
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