再エネ・技術

地域で水素サプライチェーン構築、NEDOが12件採択 - ニュース

2026-08-03
NEDOが地域での水素サプライチェーン構築に向けた12件の事業を採択し、水素製造・輸送・貯蔵・需要調査を含む実証計画の実現可能性を検討する。

専門家の視点

地域分散型の水素サプライチェーンは、再エネ余剰や副生水素など地域資源を起点にしながらも、その成否は需給モデルの定量化ではなく、輸送コストと供給リスクの天秤に掛かる物流設計に依存します。鉄道輸送や粉体キャリアなど輸送手段の多様化は、供給弾力性を高める一方で、需要密度が低い地域では単位コストが跳ね上がるため、事業化判断は実証後のデータ次第です。ここには物語先走りの構造があります。補助金で初期投資は下支えされても、調査フェーズが2026年度までである以上、実証段階での需要家確保や運用人材の配置が追いつかず、調査結果が事業計画に接続されない可能性を内包します。特に、廃棄物発電や水素化マグネシウムなど、原料調達と需要創出が同時に必要なモデルは、時間軸の非対称性が顕在化しやすいです。次の観測点は、2028年度までに進む実証で輸送コストの実測値が示されるか、そして供給管理システムが環境価値と経済性の両立を具体的に証明できるかです。地域モデルは、技術実証ではなく事業性の実証として、需要家のコミットメントを獲得できるかが分水嶺です。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は7月30日、水素社会の実現に向けて、一定の地域での水素サプライチェーンを構築し利活用・事業化などのモデルを構築する「水素社会モデル構築高度化技術開発・実証事業」について、12件の実施予定先を決定したと発表した。 同実証事業は、調査と技術開発・実証の2つのフェーズで進める。調査フェーズでは、再生可能エネルギーなどの地域資源を活用した水素の製造・貯蔵・運搬・利用に関するインフラ整備と地域特性に応じた需給モデルについて、将来の事業性・経済性などを検証し、機器開発などにつながる定量的なデータ取得など調査・研究する。8件を採択した。 「鉄道による水素輸送の供給管理・環境価値管理システム開発」は、鉄道や通信といった既存インフラを活用して水素の製造・貯蔵拠点を起点とした大規模・低コスト・低炭素な水素輸送を確立することで、水素需要創出に効率的なサプライチェーン構築を目指す。水素輸送コストと供給途絶リスクのバランスを最適化する供給管理システムと、貨物鉄道輸送におけるCO2排出量や水素量から算定する炭素集約度を管理する環境価値管理システムを開発・実証し、有効性などを評価する。事業期間は2026〜2028年度。実施者は関西電力、NTTアノードエナジー、川崎重工業、パナソニックエレクトリックワークス、神戸製鋼所(図1)。 「富山県における廃棄物発電の余剰電力を活用した水素製造・利活用に向けた調査」は、富山市エコタウン産業団地を中心とした廃棄物発電の余剰電力を活用して水素製造の低コスト化・安定供給を実現することで、地域の脱炭素化を推進するモデルの実現可能性を検討する。水素製造に関する検討、水素輸送・貯蔵に関する分析、水素需要を調査し、サプライチェーンの実証計画を策定する。事業期間は2026〜2027年度。実施者は北酸、アイザック、関西電力、住友電気工業(図2)。 「滋賀県米原市における地域産業と連携した水素製造・利活用に関する調査」は、米原市で水電解装置により製造される水素・副生成物を必要とする産業を組み合わせ、水素のカスケード利用・副生成物の有効活用を通じて水素供給コストを按分する地産地消モデル構築に向けて、水素需要量と設備規模、副生酸素や廃熱の活用先、伊吹PA周辺レイアウトなどを調査し、事業性を評価する。同モデルを他地域、他産業へも展開し、水素需要の創出、CO2排出量の削減、地域経済の活性化を目指す。事業期間は2026〜2027年度。実施者は関西電力、大和ハウス工業、名城ナノカーボン(図3)。 「内陸地における工場の脱炭素化に向けた水素利活用モデルに関する調査」では、栃木県真岡市の真岡製造所・真岡発電所を対象に、内陸地における水素利用モデルの事業性を調査する。エネルギー需要や水素製造ポテンシャルやコストを評価し、次段階である技術開発・実証フェーズに移行可能な具体的な事業像と課題を明確化する。アルミ製造工程への水素燃料の適用可能性、他地域への展開可能性を検討する。事業期間は2026年度。実施者は神戸製鋼所。 「駿河湾での粉体水素キャリアを活用した水上交通向け地域水素利活用モデル構築調査」は、静岡市が面する駿河湾地域に存在する副生水素を活用し、粉体水素キャリア(SBH)による水素供給モデルの構築可能性を検討する。合わせて、水上交通分野への水素利用を想定した地域水素サプライチェーンの成立性を評価し、将来の技術開発・実証フェーズへの移行に資する検討材料を提示する。事業期間は2026年度。実施者は静岡市、鈴与商事。 「水素化マグネシウムを活用した道内再エネ由来水素及び国産マグネシウムの一体的サプライチェーン構築に向けた調査」は、稚内市を製造拠点、札幌市を主たる需要地として、再エネ電力によるマグネシウム、SOECによる水電解水素、水素化マグネシウムの製造、道内輸送、需要地での水素利用、残渣である水酸化マグネシウムの地産地消という循環型エコシステム構築に向けて調査する。実証フェーズ移行判断の基礎とするため事業規模、事業性、価格設計、需要、ライフサイクルアセスメント(LCA)などを評価し、事業性確保に必要な定量的根拠を確立する。事業期間は2026年度。実施者はH2ほっかいどう、札幌市、千代田化工建設、TISI、東京海上日動火災保険、トクヤマ、ドーコン、みずほ銀行。 「内陸部における商用車用水素ステーション向けオンサイト水素製造・利活用ビジネスモデルの実現可能性調査」は、内陸部に立地する商用車水素ステーションを対象に、小規模オンサイト型水電解装置を核とした水素製造・供給モデルの事業成立性を調査する。需要地での水素製造による低コスト化と運用最適化の可能性を技術・経済・需要・制度の各観点から検証し、モビリティ需要を起点とし

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