中東リスクで進むLNG大転換 JERA9兆円投資と商社の米国シフト
中東リスクを背景に、JERAの9兆円投資や商社の米国シフトなど、脱炭素移行期の主力電源であるLNG調達の大転換が進んでいることを報じる記事。
専門家の視点
中東リスクを背景に米国産LNGへ調達先をシフトする動きは、実体としての物理的供給制約と、物語としての「分散すれば安全」という説明がほぼ一致している点で、構造のズレは小さく見えます。ただし、ここには実行レイヤーの時間軸という重大な非対称性が潜んでいます。JERAの9兆円投資も三井物産のバリューチェーン構築も、アラスカLNGに至っては早くても30年の稼働であり、有事は「26年のイラン戦争」と明確に予告されている。つまり、備えが効くのは危機の後であり、現在の調達構造に即効性のある手立ては存在しないのです。加えて、LNG価格高騰で新興国が石炭へ回帰する現実は、脱炭素の物語が市場の価格シグナルにいかに脆いかを示しています。隠れた前提は「LNGは移行期の主力電源であり続ける」という認識です。しかし、価格高騰と供給不安が常態化すれば、石炭回帰がさらに進み、日本自身の電源構成にも波及する可能性があります。次の観測点は、JERAが9兆円を実際にどの程度の期間で米国プロジェクトに配分し、調達ポートフォリオの顔ぶれを変えられるかです。