DHL、脱炭素化へ弾み。SBTi基準改訂が後押し
DHLジャパンがSBTi基準改訂を背景に「ブック・アンド・クレーム」方式を用いた脱炭素化の取り組みを進める
専門家の視点
DHLの「ブック・アンド・クレーム」方式は、物理的な輸送経路と環境価値の帰属を切り離す手法であり、SBTi基準改訂でこの価値移転が正式に認められた点は、物流業界の実体に即した制度設計と言えます。ただし、ここには「実体が翻訳されていない」構造があります。 輸送の脱炭素化は、代替燃料の実証やインフラ整備という物理的な時間軸が不可避ですが、ブック・アンド・クレームは市場での排出権取引を加速させ、投資家や荷主の「期待先行」を生む危険があります。つまり、簿記上の削減が実際の排出削減と誤認されるリスクです。 制度的には、SBTiが検証基準を明確にしたことは前進ですが、誰が実際に持続可能な燃料を生産・供給するのかという実行レイヤーは依然として曖昧です。DHLは物流大手として需要創出の役割を担いますが、上流の燃料製造能力が追いつかなければ、帳簿上の削減に過ぎなくなります。 隠れた前提として「環境価値の移転が実質的な削減を保証する」という考えがありますが、これは会計上の発明であって物理的な排出削減ではありません。次の観測点は、この仕組みが実際の燃料調達量とどの程度連動するかです。