再エネ・技術

ラフバラ大学が「日英水素サミット」を開催、AIによるエネルギー需要増加と水素の役割について ...

2026-08-03
ラフバラ大学が日英水素サミットを開催し、AIによるエネルギー需要増加に対応する水素の役割と再エネの変動性を補う提言をまとめた報告書について議論した。

専門家の視点

AIによる電力需要急増を背景に、水素が再エネの変動性と産業需要のギャップを埋める蓄電手段として位置づけられた点は、実体(ギャップの存在)と物語(水素の役割)が一致した議論です。ただし、ここには二つの構造的ズレがあります。一つ目は時間軸の非対称性です。デロイトが提案する郊外の自給自足型データセンターや、川崎重工の水素専焼タービンの実証は、いずれも2026年以降の実現であり、目の前のAI需要増加には即効しません。二つ目は実行レイヤーの欠落です。総括で送電網や貯蔵インフラ、社会的受容性の枠組みが挙げられましたが、誰がそれらを建設・運用・合意形成するのかという主体論が示されていません。また、データセンターの反対運動を解決する手段として「未使用地への転換」を提案するのは、送電線の敷設や冷却水源など、立地の物理的制約を過度に単純化した隠れた前提があります。水素を「単一技術ではなくエネルギーミックスの一環」と捉える総括は正しい方向ですが、その多様な要素を統合する政策と投資の具体的な工程表が欠けています。

このページではjavascriptを使用しています。 英国のラフバラ大学は7月14日、「日本・英国水素サミット」を開催した。両国の産業界、学識関係者、政策関係者ら60人が出席した。同大学は、ミッドランド地方における水素の産業化を目指す取り組みのHyDEXや、グリーン水素などを通じてネットゼロの実現を目指す博士課程教育センターのEnerHYに参画するなど、水素の産業化に注力している。本サミットでは、人工知能(AI)によるエネルギー需要の増加に対応する上での水素の役割に焦点を当て議論が行われた。 サミットの前半では、基調講演が行われた。英国工学技術学会(IET)のジェームズ・バンバラ氏とジヤド・シェリフ氏は、IETの概要および同機関が発表したグリーンペーパー(水素経済の実現に向けた提言事項をまとめた報告書)について説明。再生可能エネルギー(再エネ)の変動性と産業が必要とする一定の需要とのギャップを埋める水素貯留への投資拡大を優先事項の1つとした。デロイトのラナ・ゴーシュ=ロイ氏は、各地で地域住民によるデータセンターへの反対運動が発生していることを踏まえ、郊外の広大な未使用地をデータセンターと自家発電による自給自足型の施設へ転換することを提案した。川崎ガスタービンヨーロッパのヌレッティン・テキン氏は、同社のガスタービンにおける水素への対応について説明し、2026年内にドイツで同社のタービンを用いた世界初の産業規模水素専焼が実現予定とした。 後半では、ラフバラ大学発の技術について3者からピッチが行われた。再エネシステム技術センター(CREST)のダニー・ストリックランド氏は、蓄電池と電解装置を組み合わせたバトライザー(Battolyser)を紹介した。国立燃焼・空気熱技術センター(NCCAT)のダンカン・ウォーカー氏は、航空用ガスタービンにおける水素活用に向けた研究を説明した。同大学のスピンオフ企業インテリジェント・エナジーのクリス・ダッドフィールド氏は、ドローン用の小型軽量モデルから定置用の大型モデルまで多岐にわたる同社の燃料電池を紹介した。 同大学の工学博士で、エネルギー移行分野の日英連携を支援するゲッコーアドバイザリーサービスのインドラニル・ナータ氏は、本サミットの議論を総括し、水素を単一技術ではなく、広範なエネルギーミックスの一環として捉えるべきであるとした。その上で、送電網、水素の輸送・貯蔵インフラ、一貫した政策、社会的受容性を醸成するための枠組みの重要性に言及した。 ビジネス短信 6f0e76ef2bb73c39 メンバーズ・サービスデスク(会員サービス班) E-mail:jmember@jetro.go.jp

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