夏季特集 出光興産・コスモエネHD、エネルギー安定供給へ基盤強化 : 化学工業日報 電子版
出光興産とコスモエネルギーホールディングスが、安定供給に向けSAFや水素・アンモニア、合成燃料など低・脱炭素分野の基盤強化を継続する動きを紹介。
専門家の視点
石油元売り各社の低・脱炭素戦略は、既存の燃料供給インフラが最大の実体です。SAFや合成燃料の技術は実証段階にあり、商業化には原料調達と価格競争力という物理的制約が立ちはだかります。ここでの中心的なズレは、物語先走りの構造です。政府の2050年ネットゼロ目標や成長戦略は壮大ですが、個社の投資判断は需要不透明性を理由に据え置きを続けます。政策支援の不確実さが、企業の実行レイヤーを動かす決定打になっていません。隠れた前提は「安定供給と脱炭素は両立する」という命題です。石油精製設備を転用する道はありますが、既存資産の減価償却と新規投資の二重負担は避けられません。次の観測点は、各社が公表する中期的な設備投資配分の数字です。そこでSAFや水素関連への資金割合が明確に増えなければ、今回の記事は現状の課題整理に留まります。時間軸で言えば、石油元売りの転換は2030年以降に本格化し、それまでの間に需要創出策と原料サプライチェーンの具体化が不可欠です。両立しにくい二つの事実、即ち脱炭素への長期コミットメントと短期的な収益確保の板挟みは、今後も日本のエネルギー政策の核心であり続けます。