グリーン水素で還元鉄 JFEなど試作成功、国内初
専門家の視点
日本初のグリーン水素による還元鉄試作成功は、技術的な実証としては確かな一歩です。しかし、ここで注目すべきは「物語」と「実体」の時間軸のズレです。2050年のカーボンニュートラル実現という長期ビジョンと、現状のパイロットプラント生産能力15キログラム毎時という規模の隔たりは大きく、この試作が直ちに商業生産への道筋を示すものではありません。技術の社会実装には、水素供給コストの低減、大規模な還元鉄製造設備への投資、そして鉄鉱石由来の不純物処理という未解決の課題が立ちはだかります。 この構造は「物語先走り」です。企業と政府が掲げる壮大なビジョンに対し、実体である技術的・経済的ハードルが依然として高く、その差を埋める具体的なロードマップが提示されていません。特に、グリーン水素の製造コストが現状の化石燃料由来水素より数倍高いという事実は、経済合理性の観点から解決が最優先されるべき論点です。 次の観測点は、この小型実証から実機規模へのスケールアップ計画と、水素コスト低減のための具体的な数値目標です。
JFEスチール、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、やまなしハイドロジェンカンパニー(YHC)、巴商会、カナデビア、山梨県企業局、水素製鉄コンソーシアム(GREINS)は31日、日本初のグリーン水素を使用した還元鉄の試作に成功したと発表した。NEDOのグリーンイノベーション基金事業「製鉄プロセスにおける水素活用」プロジェクトの「水素だけで低品位の鉄鉱石を還元する直接水素還元技術の開発/直接水素還元技術の開発」によるもので、今後も直接水素還元技術の開発を推進し社会実装を目指す。 製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクトでは、JFEスチール東日本製鉄所(千葉地区)に生産能力15キログラム毎時の小型パイロットプラントを建設し、2024年12月から水素還元の試験を開始している。6月29日から7月1日にかけてグリーン水素を用いた水素還元試験を行い、日本で初めて約1トンの還元鉄を製造した。鉄鉱石の安定した還元反応により還元鉄の製造が可能なことを確認した。 グリーン水素の供給に当たり、山梨県企業局がNEDOの水素社会構築技術開発事業として建設した米倉山電力貯蔵技術研究サイトを活用した。ここでは再生可能エネルギーを使用し、カナデビア製の1・5メガワットのPEM型水電解設備でグリーン水素を製造し、高圧水素ガスとして輸送・販売する体制を構築している。今回、YHCと巴商会を通じてグリーン水素の供給を受けた。 鉄鋼業は産業部門で二酸化炭素(CO2)を排出する最大の産業で、日本全体のCO2排出量の約14%を占める。日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所、金属系材料研究開発センター(JRCM)は22年にGREINSを結成し、製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクトで、CO2排出量を飛躍的に低減する技術の開発に取り組んでいる。 同プロジェクトは業界を横断した体制を構築し、技術開発と社会実装を見据えた取り組みが特徴で、多数の国内研究機関と連携しながら開発を進めている。直接水素還元技術の開発テーマでは、規模や仕様の異なる2基の直接還元試験設備(シャフト炉)を建設し、24年度から直接水素還元技術の開発に取り組んでいる。 今後、JFEスチールは第8次中期経営計画で掲げたグリーンイノベーション基金などを活用しながら超革新技術の開発を進め、35年ごろまでにカーボンニュートラル実現に向けた技術の確立を目指す。GREINSは、同プロジェクトに関する技術開発や社会実装に向け複線的な取り組みを継続し、各社の人的資源、設備・装置、ノウハウなどのリソースを共同で活用・共有することで、50年カーボンニュートラルの実現に貢献する。
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