世界で年間9,200万トンが廃棄 「古着ブーム」でも服の大量廃棄が減らない本当の理由 | AMP[アンプ] - 人生の豊かさを生む瞬間を情報でつくりだす新世代向けビジネスメディア
専門家の視点
欧州の循環型レポートが突きつける構造は、リユース市場の成長と過剰生産の拡大が同時進行する「物語先走り」の構図です。再着用可能な古着が8割存在しても、洗浄・検品コストが販売価格を上回れば再流通しないという事実は、循環経済の理念と採算性の現実の間に深い溝があることを示します。だからこそ、選別施設の事例が象徴的です。年間4,700万キログラムの取扱量に対してリペアは50キログラムという数字が、実行レイヤーの欠落を明確にします。つまり、誰が低価格帯の古着を担うのかという事業主体の不在が、この問題の核心です。加えて、古着の価格が品質ではなくブランド力やトレンド性で決まるという隠れた前提があります。耐久財としての価値と市場のトレンド性は両立しにくい二つの事実であり、この不一致を解消しない限り、日本の高齢社会における「長期使用モデル」も成功しません。次の観測点は、日本企業が低価格帯衣料の再流通コストをどう削減するかです。技術革新による選別自動化や、補助金によるリペア産業の育成が、この構造転換の要になるのです。
世界のファッション業界はいま、「循環型経済」への転換を急いでいる。リセール・リペア・アップサイクル・レンタル。あらゆるブランドが“サステナブル化”を掲げているにも関わらず、衣類の廃棄量は増え続けている。 その矛盾に真正面から切り込んだのが、オランダの非営利団体Fashion for Goodと、同じくオランダのシンクタンクCircle Economyによる最新レポート『Sorting for Circularity: Project Rewear(以下、Project Rewear)』である。 Project Rewearはヨーロッパ4カ国、ガーナ、パキスタンをまたぐ大規模調査を通じて、古着経済の実態と限界、そして次世代循環インフラの可能性を描き出している。そこから浮かび上がるのは、単なる「古着ブーム」では解決できない、構造的な問題である。 現在のファッション産業は典型的な「Take-Make-Waste(採取・製造・廃棄)」型産業である。資源を採取し、製品を製造し、消費された後に廃棄される一方向型の経済モデルだ。 Project Rewearによれば、世界では年間9,200万トン以上の繊維廃棄物が発生している。一方で、循環利用されている素材はそのうちのわずか0.3%に過ぎない。さらに世界の衣類の生産量は2030年までに2015年比で63%増加すると予測されている。 Project Rewearは、ファッション業界の問題を「廃棄」ではなく、“過剰生産そのもの”にあると指摘する。実際、世界では毎年1,000億~1,500億着の衣類が生産され、その最大30%は消費者の手に渡ることなく余剰在庫となるとも推定されている。 つまり、衣類のリユース市場が成長しても、新品生産量が減らなければ環境負荷は根本的には改善しないのである。 Project Rewearでは、オランダ、スペイン、ポーランド、リトアニアの4カ国で8,280点の古着を分析した。その結果は衝撃的である。37%は無傷と判明し、さらに41%は軽微な損傷のみであり、合計すると約8割が再着用可能だった。 しかし、それらの多くは再流通しない。再着用できる状態であっても、リペアや洗浄、検品にかかるコストが販売価格を上回り、利益を確保できないためである。 たとえば小さなシミ、毛玉、ボタン欠損程度なら簡単に修復可能である。しかしヨーロッパの古着市場では、洗浄・検品・物流・撮影・人件費を加えると、販売価格を上回ってしまうケースが珍しくない。 Project Rewearでは、ある選別施設で年間4,700万キログラムの衣類を扱う一方、リペアされたのはわずか50キログラムだったという事例も紹介されている。 ここで重要なのは、服の価値は「品質」だけで決まらないという点である。調査では、素材耐久性や損傷度よりも、ブランド力やトレンド性の方が価格を左右していることが明らかになっている。 H MやZARAなどのファストファッションブランドの服が大量に流通している一方で、物理的には着用可能でも“販売できない服”は大量に存在する。つまり現代の古着市場は、「耐久財市場」ではなく、依然として「トレンド市場」なのである。 この問題は決してヨーロッパだけの話ではない。日本でも年間約47万トンの衣類が廃棄されているとされ、環境省によれば、その多くが焼却または埋立処理されている。 日本は一見すると「服を長く着る文化」が残っているように見える。しかし現実には、低価格EC、短サイクルトレンド、SNS起点の消費加速によって、国内でも大量廃棄構造は確実に進行している。 さらに、日本の古着市場にもヨーロッパと共通する構造がある。リユース業界は成長しているものの、収益の中心はブランド品や状態の良い高価格帯商品であり、大量に流通する低価格衣料の再流通は依然として難しい。 一方で、日本には独自の可能性もある。たとえばワークウェア、アウトドア、デニム、ユニフォームなど、耐久性の高いカテゴリにおいては、リペア・再販との親和性が高い。実際、Patagoniaの「Worn Wear」やGoldwinのリペアサービスなど、長寿命化を前提とした事業モデルは国内でも徐々に広がり始めている。 また、日本は高齢社会でもある。今後は「大量所有」よりも、「少数を長く使う」価値観との親和性が高まる可能性もある。つまり日本のファッション市場は、単なるヨーロッパ型リセール追随ではなく、“長期使用前提の循環モデル”を独自に構築できる余地がある。 Project Rewearが特に踏み込んでいるのが、ヨーロッパから輸出される古着の行き先である。ガーナ・アクラのカンタマント市場には、毎週約1,500万着の古着が運び込まれる。ここは世界最大級の古着市場として知られている
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