JFEスチール株式会社
専門家の視点
日本初のグリーン水素による還元鉄試作成功は、実体として確かな一歩です。約1トンの還元鉄製造は、技術が実験室から実証段階へ移行したことを示す測定可能な事実であり、この点は高く評価できます。ただし、構造的なズレは「期待先行」と「実体の規模」の間にあります。15kg/hという試験設備の処理能力は、商業炉の数千分の一に過ぎず、1トンという数字は象徴的な通過点です。物語は2050年カーボンニュートラルを壮大に語りますが、安価な水素の大量確保という前提が未解決のままです。また、山梨県米倉山の水素製造能力は1.5MWであり、製鉄所の需要を満たすには桁が違います。ここに制度と技術の非対称性が現れます。グリーン水素の供給網は実証レベルであり、産業規模へのスケールアップは、電力コストと水素価格という経済合理性に依存しています。隠れた前提は「グリーン水素が十分な量で安定供給される」ことですが、現状の再エネ発電量と水電解設備の能力では、高炉の代替は不可能です。次の観測点は、このパイロット設備が2026年以降にどれだけの稼働時間を積み、コストデータを開示するかです。
2026年7月31日 JFEスチール株式会社 NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構) 株式会社やまなしハイドロジェンカンパニー(YHC) 株式会社巴商会 カナデビア株式会社 山梨県企業局 水素製鉄コンソーシアム(GREINS) NEDOのグリーンイノベーション基金事業「製鉄プロセスにおける水素活用」プロジェクト(以下、本プロジェクト)の「水素だけで低品位の鉄鉱石を還元する直接水素還元技術の開発/直接水素還元技術の開発」において、日本で初めてグリーン水素を用いた還元鉄の試作に成功しました。 この試作は、NEDOの水素社会構築技術開発事業で建設した水素製造設備からグリーン水素の供給を受け、本プロジェクトで建設した直接水素還元の試験設備を使用したもので、グリーン水素の製造技術開発と利用技術開発が連携することにより実現しました。 今後は、引き続き直接水素還元技術の開発を推進し、社会実装を目指します。加えて、プロジェクトの垣根を越えた連携にも力を入れ、鉄鋼分野における2050年カーボンニュートラル実現を目指し、温室効果ガスの排出削減に貢献します。 鉄鋼業は産業部門における最大の二酸化炭素(CO2)排出産業であり、日本全体のCO2排出量の約14%を占めることから、その削減を強く求められています。日本製鉄株式会社、JFEスチール株式会社、株式会社神戸製鋼所、および一般社団法人金属系材料研究開発センター(JRCM)は2022年に水素製鉄コンソーシアム(GREINS※1)を結成し、本プロジェクト※2にて、CO2排出量を飛躍的に低減する技術の開発に取り組んでいます。本プロジェクトは、業界を横断した体制を構築するとともに、技術開発と社会実装を見据えた取り組みを特徴とし、多数の国内研究機関と連携しながら開発を進めています。 本プロジェクトの直接水素還元技術の開発テーマでは、規模や仕様の異なる2基の直接還元試験設備(シャフト炉)を建設し、2024年度から直接水素還元技術の開発に取り組んでいます。 (1)グリーン水素※3の供給 山梨県企業局はNEDOの水素社会構築技術開発事業「CO2フリーの水素社会構築を目指したPower to Gasシステム技術開発」※4の活動として山梨県米倉山に「米倉山電力貯蔵技術研究サイト」を建設し、運用してきました。ここでは、再生可能エネルギーを使用し、カナデビア株式会社製の1.5MWのPEM型水電解設備によりグリーン水素を製造し、高圧水素ガスとして輸送および販売する体制を構築しています。今回、株式会社やまなしハイドロジェンカンパニー(YHC)と株式会社巴商会を通じてグリーン水素の供給を受け、還元鉄※5の試作に使用しました。 (2)グリーン水素を用いた還元鉄の製造 本プロジェクトでは、JFEスチール東日本製鉄所(千葉地区)に生産能力15kg/hの小型パイロットプラントを建設し、2024年12月から水素還元の試験を開始しています。今回、山梨県米倉山で製造したグリーン水素をトレーラーで運搬・供給し、6月29日から7月1日にかけてグリーン水素を用いた水素還元試験を行い、日本で初めて※6約1トンの還元鉄を製造しました。その結果、グリーン水素を用いた鉄鉱石の安定した還元反応により還元鉄の製造が可能であることを確認しました。 NEDOは、引き続き本プロジェクトを推進し、開発技術の早期社会実装を目指します。他方、鉄鋼業のカーボンニュートラル実現のためには、安価な水素を大量に確保することや、排出されるCO2の分離回収や有効利用、貯留(CCUS)などの製鉄分野以外と連携した開発が必要となります。今後もNEDOは、プロジェクト間の連携にも一層力を入れ、2050年カーボンニュートラル実現を目指し、鉄鋼分野における温室効果ガスの排出削減に貢献します。 JFEスチールは、第8次中期経営計画で掲げた、グリーンイノベーション基金なども活用しながら超革新技術の開発を推進し、2035年頃までにカーボンニュートラル実現に向けた技術の確立を目指しています。今後も、今回のグリーン水素を用いた直接還元技術に加え、カーボンリサイクル高炉などの超革新技術の開発に複線的に取り組み、2050年カーボンニュートラル実現を目指します。 やまなしハイドロジェンカンパニー(YHC)、巴商会、カナデビア、山梨県企業局は、参画企業と共同開発したグリーン水素製造設備「やまなしモデルP2Gシステム」の導入拡大を通じて、グリーン水素の生産・供給体制の強化を推進します。また、安定的な供給基盤の構築に取り組むことで、2050年カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。 水素製鉄コンソーシアム(GREINS)は、本プロジェクトに関する技術開発および社会実装に向けた複線的な取り
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