高市政権「重点17分野」に370兆円投資、「勝ち筋」はどこに
専門家の視点
370兆円超の官民投資計画は、実体としての資金規模は巨大ですが、その配分と実行レイヤーに構造的な問いが潜んでいます。17分野は守りと攻めを一体化した点で物語として一貫していますが、肝心の「誰が具体的に実行するのか」が欠落しています。防衛や防災は公共事業の性格が強く、企業の投資判断が政府の長期コミットメントに依存します。一方、量子や核融合は出口が遠く、民間が自走的に動くにはリスクが大きい。ここに「物語先行の期待」と「実体としての実行主体の不在」というズレがあります。記事では米主要IT企業の100兆円AI投資が引き合いに出されていますが、日本の17分野の370兆円は官民合計であり、官が呼び水になっても民が追従する保証はありません。隠れた前提は「政府が重点分野を指定すれば企業が自動的に動く」という発想です。実際には、規制改革や人材供給、市場形成の設計なしには資金は滞留します。次の観測点は、官民の役割分担と、企業が自社の勝ち筋を具体的な投資計画に落とし込めるかどうかです。この政策は、物語の枠組みは整ったものの、実体との接続がまだ図られていない段階です。
高市政権はこのほど、AI・半導体から海洋までの「戦略17分野」に対し、2040年度までに官民で370兆円超を投じる計画を示した。防衛産業や防災・国土強靱化といった「守り」の分野と、量子や核融合といった「攻め」の分野が同じ土俵に並ぶ、かつてない規模の産業政策だ。政府が重視するこの17分野に対して、企業はどのように「勝ち筋」を見出せるか。(オルタナ総研所長=町井則雄) 高市政権は6月24日、経済財政諮問会議・日本成長戦略会議の合同会議で「戦略17分野」に対し、2040年度までに官民で370兆円超を投じる計画を示した。この「戦略17分野」は7月に閣議決定した「骨太の方針」の柱でもある。 この構想について、3つの視点から考えてみたい。 第一に、経済安全保障と成長戦略が一体化した産業政策の姿である。従来、経済安保は「守り」、成長戦略は「攻め」と、別物として語られることが多かった。 しかし今回の17分野は、この二つを関連させた。中でも資源・エネルギー安全保障・GXや重要鉱物、創薬・先端医療といった分野は、気候変動対応やサプライチェーンの強靭化という、サステナビリティの本丸にも直結する領域となっている。 ■気候変動対策は「GX」だけでいいのか■「総花的」で戦略性が見えない■米主要IT企業は100兆円のAI投資も■企業に問われる「したたかさ」 株式会社シンカ 代表取締役社長/一般財団法人 22世紀に残すもの 理事長/ 株式会社オルタナ オルタナ総研所長/岩手町政策アドバイザー など 1993年日本財団に入会。「日本財団図書館」・「日本財団公益コミュニティサイト『CANPAN(カンパン)』」の企画・開発を行うと共に、企業のCSRの取り組みを可視化するデータベース「CANPAN CSRプラス」の企画・開発に携わる。「世界を変えるデザイン展」、「未来を変えるデザイン展」の企画・総合プロデューサー。日本財団を2016年9月に退職、企業の社会課題解決型ビジネス創出のサポートやCSR支援を行うため株式会社sinKA(シンカ)を立ち上げ、現在に至る。経産省 地域新成長産業創出促進事業審査委員、内閣府「新しい公共推進会議」情報開示・発信基盤に関するワーキング・グループ委員、G4マルチステークホルダー委員会委員、CSR検定委員会 委員等を歴任。著書(共著) 「CSR検定テキスト」 、「企業と震災(木楽舎刊)」 など。
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