太陽電池の性能評価に関連する主要規格
専門家の視点
太陽電池の国際規格体系が、従来型を前提に構築されたIEC 60904シリーズを基盤としながら、ペロブスカイト太陽電池のような次世代デバイスの特殊な物理特性(ヒステリシスや準安定状態)を補完する規格IEC TS 60904-1-4 ED1の開発へと進んでいる点が、構造上の核心です。この記事が示す現実は、既存規格が全ての技術にそのまま適用できるわけではない、という実体です。物語としては、「ゼロからの新設ではなく基本規格をベースとする」と説明され、連続性と段階的改良が強調されていますが、ペロブスカイト特有の挙動が既存の「測定環境のルール」だけでは捕捉できないという実体との間にズレが生じ始めています。ここでの構造は「実体の翻訳不足」です。つまり、技術進歩のスピードに評価基準の整備が追いついておらず、市場投入や投資判断を下す側にとって、製品の性能をどう信頼するかという期待が先行し萎縮するリスクがあります。次の観測点は、補完規格IEC TS 60904-1-4 ED1の開発スケジュールと、それが製品認証(IEC 61215等)とどう整合するかです。
IEC/TC 82/WG 2で審議されている「太陽電池」の計測評価法や流通において重要となる主要な国際規格は、その目的に応じて図4のように分類できる。以降に、図4の上から順に見ていく。 図4 IEC/TC 82/WG 2における「太陽電池」の性能評価に関連するIEC規格 出所 国立研究開発法人産業技術総合研究所 吉田 正裕 氏(再生可能エネルギー研究センター 太陽光評価・標準研究チーム)提供資料をもとに編集部作成 太陽電池の電流-電圧(I-V)特性は、温度や光照度(光の強さ)により著しく変化するため、共通の測定・評価基準が不可欠である。その基盤として、次の2つの規格群が相互に連携して機能している(後述)。 ■IEC 60891:測定によって得られたデータを環境条件に合わせて計算・補正する手順を規定。 ■IEC 60904シリーズ(基本規格):測定環境のルールや測定機器の基準(測定手法)を規定。結晶シリコンや化合物系などの従来型太陽電池をベースに策定された、すべての性能評価の土台となる。 〔1〕の測定法を参照し、特定の気候帯における日射量、あるいは年間を通じた累積発電量を実効的に算出・評価するための規格として、IEC 61853シリーズが規定されている。 実際の製品流通(市場投入)において不可欠となる認証制度であり、相互に補完関係にある(後述)。 ■IEC 61215シリーズ:設計適格性確認および型式認証(信頼性評価)を規定。 ■IEC 61730シリーズ:製品の安全性適合性(安全適格性)を担保する61215シリーズの兄弟規格。 ■IEC 62915:一度認証を取得したモジュールの設計変更(材料やプロセスの変更)に伴う再試験の手順を定義。 太陽電池モジュールを量産する際の品質管理システム(QMS:Quality Management System)に対する固有の要求事項として、IEC 62941が規定されている。現在市販されている結晶シリコン等の主要製品は、この規格に準拠した管理体制下で製造されている。 〔5〕ペロブスカイトおよび有機太陽電池における測定法 次世代デバイスであるペロブスカイト太陽電池の測定法は、ゼロからの新設ではなく、基本規格である既存の「IEC 60904シリーズ」の測定条件や手順をベースとしている。 同デバイスには「ヒステリシス」や「準安定状態」といった特異な物理的性質があり、既存規格単体の適用では正確な評価が困難であることから、現在はIEC 60904シリーズを基本としつつ、これらの特性を補完する規格「IEC TS 60904-1-4 ED1」の開発が進められているが、その開発の参照となる技術情報として、次の規格がすでに発行されている(図4参照)。 ■IEC TR 63228(技術報告書):太陽光発電の専門委員会「TC 82」で策定された、有機およびペロブスカイト太陽電池の測定プロトコルに関する技術情報。 特集【第1部 その2】ペロブスカイト太陽電池を支える2つのガイドライン ― 実装を後押しする設計・施工方針と評価基準の策定 ― 再生可能エネルギー 特集【第1部 その2】ペロブスカイト太陽電池を支える2つのガイドライン ― 実装を後押しする設計・施工方針と評価基準の策定 ―7月29日 13:30 再生可能エネルギー 特集【第1部 その1】日本政府のペロブスカイト太陽電池戦略 ― 2040年20GW目標と、官民一体で進む本格実装へのロードマップ ―7月24日 16:56 再生可能エネルギー バックナンバーをもっと見る 筆者の人気記事 スタートした特定計量制度! ガイドラインに見る「対象となる計量例」と「対象とならない計量例」 タンデム型ペロブスカイト量産へ、政府が2社に94億円支援 PoEによる直流給電:IEEE 802.3af/802.3atからUPOEまで NGNの核となるIMS(2):IMSのアーキテクチャ、インタフェースとプロトコル 電力自由化時代の「調整力」「同時同量」とは? インプレスSmartGridニューズレター編集... 特集【第1部 その2】ペロブスカイト太陽電池を支える2つのガイドライン ― 実装を後押しする設計・施工方針と評価基準の策定 ― インプレスSmartGridニューズレター編集... 低GHG銅ケーブル、アマゾン物流拠点へ実装:三菱マテリアルらが実証開始 インプレスSmartGridニューズレター編集... パシフィックコンサル、ペロブスカイト太陽電池実証が完了:堤防法面での有効性を確認 インプレスSmartGridニューズレター編集... 特集【第1部 その1】日本政府のペロブスカイト太陽電池戦略 ― 2040年20GW目標と、官民一体で進む本格実装へのロードマップ ―
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