第15回アジア・ビジネス・サミット共同声明 (2026-07-30)
専門家の視点
アジア経済団体による首脳声明は、現実のエネルギー逼迫と、ルールに基づく国際秩序維持という二つの要請を掲げますが、その接合部に構造的な歪みがあります。エネルギー源の多様化や省エネ推進は、供給不安への短期的な対応策であり、カーボンニュートラルという長期目標とは時間軸が異なるのです。目先の価格高騰対策としてLNG活用を進めることは、中長期的な脱炭素投資を先送りする物語先走りの側面を持ちます。また、声明は「人材育成の促進」を謳いますが、具体的な産業転換や雇用政策への言及はなく、実行レイヤーが不明瞭です。サプライチェーン強靭化の主体が政府なのか企業なのか、コスト負担の所在が示されないまま、RCEPの関税削減前倒しやWTO改革など制度論に議論が収斂しています。この声明は、世界的な分断状況への懸念を共有する物語は一貫していますが、エネルギーの安定供給と脱炭素の両立という矛盾を、協力枠組みの名称列挙で棚上げした期待先行の構造と言えます。次の観測点は、原油備蓄構想に各国政府が具体的な資金と役割を与えるかどうかです。アジアのGX人材への示唆は明快で、制度の熱量と現場の実行力の乖離を埋める翻訳者が必要です。
2026年7月30日、アジアの11の経済団体がシンガポールに集い、「アジアの次なる成長の章:デジタル、グリーン、そしてつながる未来」をテーマに、第15回アジア・ビジネス・サミットを開催した。 保護主義的・一国主義的な傾向の継続、中東情勢の不安定化などを背景に、国際情勢の不確実性が一層高まっている。アジアが成長の基盤としてきた、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序ならびに広域かつ高度に統合されたサプライチェーンは大きな危機に直面している。 同時に、アジア共通の課題である気候変動に加え、AIの急速な進化・普及により、経済社会に非連続的かつ予測困難な変化と新たなリスクが生じており、これらへの対応も不可欠である。 本日の会合では、こうした認識を共有し、アジアの持続的な繁栄に向けて、第一に、アジアにおけるサプライチェーンの強靭化・安定化、第二に、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化、第三に、デジタル・AIイノベーションによる競争力の強化、第四に、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの推進において協力を深化していくことで一致した。 なお、これらの協力を進めていく上で、地域の競争力を牽引する人材をアジアから継続的に輩出していくことが不可欠であり、アジアの経済界が連携し、域内の人材交流および人材育成の促進を一層図っていくことが重要である。 本年2月以降の中東情勢の変化は、原油をはじめとするエネルギーや資源について、世界的な供給不安および価格高騰をもたらした。特に、エネルギー供給の大宗を中東湾岸諸国からの輸入に依存するアジア各国・地域においては、その影響が顕著に表れ、サプライチェーンの脆弱性が浮き彫りとなった。 また、アジア各国・地域の産業はサプライチェーンを通じて相互に深く結び付いているため、域内のいずれかの国・地域でエネルギー供給に支障が生じた場合、その影響はサプライチェーンを通じて域内全体に波及する。さらに、アジアは世界のサプライチェーンの中核を担っており、その停滞や混乱は世界経済に大きな影響を及ぼし得る。 このような状況を踏まえ、アジアにおけるサプライチェーンの強靭化・安定化に向けて、「アジア・エネルギー・資源供給力強靭化パートナーシップ(パワー・アジア)」、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」、その他多国間のエネルギー・気候メカニズム等複数の協力枠組みを通じて、原油備蓄システムの構築など、エネルギーの安定供給体制の強化を図る必要がある。加えて、LNGの活用や再生可能エネルギーの導入拡大によるエネルギー源の多様化および省エネルギー技術の普及を進めることにより、域内経済の持続的な発展につなげていくことが重要である。 また、中小企業はアジア経済の基盤を成す存在であり、エネルギー価格の変動やサプライチェーンの寸断による影響を最も受けやすいことから、中小企業が地域サプライチェーンの強靭化に向けた取り組みに十分に参画し、その成果を享受できるようにすることが重要である。 アジアは、各種の経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定等を通じた経済統合の深化により、グローバルサプライチェーンを構築し、経済発展を遂げてきた。アジアが持続的な成長を実現していくためには、これらの通商枠組を更に発展・拡大し、地域の経済基盤を強化していくことが求められる。さらに、こうした取り組みは、開かれたダイナミックで強靭、平和なアジアのコミュニティの構築にも資するものである。 「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」は、GDP、貿易総額、人口が世界全体の約3割を占める大型FTAであり、サプライチェーンの強靭化の観点からも重要である。2027年に予定されている「一般的な見直し」に向けて、関税削減における対象拡大とスケジュールの前倒しや、貿易歪曲措置の防止に取り組むべきである。 「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」については、高水準のルールの履行、既存のルールを十分に遵守している実績、参加国の合意の「CPTPP加入3原則」を前提として、加入エコノミーの拡大を推進する必要がある。同時にルールの一層の拡充、ASEANおよびEU双方との連携に取り組むことが必要である。 また、WTOを中核とする多国間貿易枠組は、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序を維持・強化する上で引き続き重要であり、アジアの経済界としてWTO体制の改革推進を強く求める。具体的には、紛争解決機能の回復に加え、公平な競争条件の確保、また、電子商取引協定や開発のための投資円滑化協定を早期にWTO協定に組み込むことが求められる。 アジアの生産性の向上、新たな価値創造、産業競争力の強化において、デジタル・A
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