【日本】改正建築物省エネ法成立。建築物通算炭素排出量削減を努力義務化
専門家の視点
改正建築物省エネ法の成立は、日本の脱炭素政策において「建築物のライフサイクル全体での炭素排出削減」という新たな物語を法制化した点が構造上の核心です。これまで省エネ法が主に運用時のエネルギー消費に焦点を当てていたのに対し、改正法は建材製造や建設、解体までを含む通算排出量を対象に拡大しました。しかし、その規制手段は「努力義務」であり、実体としての強制力や遵守を確認する仕組みは未整備のままです。ここに「物語先走り」の構造があります。ビジョンは先進的ですが、誰がどのようにライフサイクル全体の排出量を算定・開示・検証するのか、実行レイヤーと制度の設計が追いついていません。また、不動産市場では、開示情報をどう評価し投資判断に結びつけるかという期待が先行する一方で、中小の建築事業者には実務対応の負荷が大きく、導入の非対称性が生まれます。この法律の成否は、努力義務が実質的な業界標準へと昇華されるかどうかにかかっており、次に見るべき観測点は、国土交通省が今後示す算定ガイドラインの具体性と、民間の認証制度との整合性です。物語を現実に翻訳するための制度設計が急務であると断言できます。
参議院は7月24日、本会議で建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案(改正建築物省エネ法)を賛成多数で可決した。同法案は衆議院本会議で6月4日に可決されており、同日成立した。建築物の建設から利用等の各段階で排出される炭素量を通算して評価する「建築物通算炭素排出量評価」が創設された。 今回の改正では、建築主等に対し、建築物通算炭素排出量(ライフサイクル全体の排出量)を削減する努力義務を課す。建築士と建設業者には、建築主等に対して削減に資する事項を説明する努力義務を、建材等の製造事業者には、製造する建築材料等の炭素排出量原単位を表示する努力義務を課す。 一定規模以上の特定用途建築物を新築・増築・改築する建築主には、設計段階で建築物通算炭素排出量の削減計画を作成することを義務化。計画には建築物の構造方法や、建築材料及び設備の使用・設置に関する事項を盛り込む。 加えて建築主に対しては、設計段階で建築物通算炭素排出量を算定し、建築物の環境負荷を評価する「建築物通算炭素排出量評価」の実施も求める。建築主は、削減計画と評価結果を国土交通相に届け出るか通知しなければならない。国土交通相は、計画に盛り込まれた削減措置が著しく不十分と認める場合、必要な措置を講じるよう勧告できる。 また、建築物のエネルギー消費性能や、建築物通算炭素排出量評価に基づく環境負荷低減の程度を対象とした認証制度も創設する。建築主等は、国土交通相の登録を受けた機関に認証を申請でき、認証を取得した建築物等には認証標章を表示できる。 住宅分野では、規格化された住宅を年間に一定戸数以上供給する事業者のうち、住宅市場で特に大きな割合を占める事業者を国土交通相が指定する制度を導入する。指定事業者には、住宅のエネルギー消費性能向上に向けた中長期計画の作成と、計画内容及び取組状況の毎年度報告を義務付ける。取組状況が著しく不十分な場合、国土交通相は勧告等を行うことができる。 この他、建築物エネルギー消費性能誘導基準に適合する建築物と同等以上の性能があると国土交通相が認定した建築物について、省エネ設備等の設置に伴って床面積が増加する場合、一定の床面積を容積率算定の基礎となる延べ面積から除外する措置も設ける。 ※ 閲覧チケットは翌月への繰り越しはできません。 【無料会員向け】有料記事の閲覧チケットの詳細はこちら 株式会社ニューラル サステナビリティ研究所
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