洋上風力コスト増、続く逆風 英社撤退、政府は引き留め策
専門家の視点
洋上風力事業は巨額投資と長期回収を前提とするにもかかわらず、世界的インフレという実体(建設コストの構造的上昇と採算の悪化)が、政府の掲げる再生可能エネルギー拡大の物語(電源構成目標や切り札というフレーミング)と大きく乖離しています。政府は「長期脱炭素電源オークション」への参加拡大で事業者を引き留めようとしますが、支援策の実体は収入保証の期間と上限の調整にとどまり、高騰する建設費そのものを吸収する仕組みではありません。ここにあるのは「物語先走り」の構造です。現実の経済合理性は厳しく、企業連合からの離脱ドミノが起きれば、入札制度そのものの信頼が損なわれます。隠れた前提は「企業連合は構成員の離脱があっても事業継続可能」という楽観ですが、連合内の疑心暗鬼が人材や技術の空洞化を招き、実質的な事業執行力を削ぐリスクがあります。次の観測点は、支援強化で撤退が止まるかではなく、むしろ離脱した企業の知見やサプライチェーンが日本に残るかどうかです。
周囲を海に囲まれる日本の再生可能エネルギー拡大の「切り札」と期待される洋上風力に対し、世界的なインフレによる建設コストの高騰という逆風がやまない。山形県遊佐町沖の事業者に選定された企業連合からは、英石油大手BPが離脱を検討。他海域でも撤退ドミノの動きが広がらないか、協業会社には疑心暗鬼の目が向けられる。経済産業省は事業者への支援を拡大し、引き留めを図る。 洋上風力、「実現性」を重視 撤退防止へ公募見直し―政府 洋上風力事業は巨額の投資や高度な技術を要するため、商社や電力会社などが企業連合を組んで開発している。国は「促進区域」に指定した海域で、事業者の入札を実施。山形県遊佐町沖は2024年12月に、丸紅や関西電力、BP、東京ガスなどの企業連合が落札していた。 ただ、コスト増など事業環境が厳しさを増す中、BPは参画を続けるのは難しいと判断したもようだ。BPが抜けても、丸紅など残る企業で事業は継続する。 「うちの企業連合から抜ける社はいないだろうか」。BPの撤退方針が明らかになって以降、他海域の開発に参画する事業者は、企業連合からの脱退の動きを警戒する。 政府は昨年2月に閣議決定したエネルギー基本計画で、電源構成に占める風力発電の割合を40年度に4~8%程度(23年度は1.1%)に高める方針を打ち出した。しかし、三菱商事を中心とした連合は同年8月、コスト増を理由に、千葉、秋田両県沖の3海域からの事業撤退を表明。政府の公募第1弾で選ばれた象徴的な案件だっただけに、衝撃は大きかった。 このため、経産省は洋上風力への資金支援を強化する。脱炭素電源に投資する事業者に20年間、一定の収入を保証する「長期脱炭素電源オークション」に、国がすでに公募した洋上風力の事業者も参加できるようにする。収入保証の上限額も引き上げる。ただ、ある事業者は「(支援が強化されても)採算には余裕はない」と漏らす。
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