企業動向

脱炭素支える鉱業・金属施設、66%が水リスクに直面

2026-07-28
国際金属・鉱業評議会が、世界の主要な鉱山・金属施設の66%が水リスクに直面していると報告した。

専門家の視点

この分析の構造は「実体が翻訳されていない」ことにあります。ICMMの報告書が示す「鉱業・金属関連施設の66%が水リスクに直面」という数字は、脱炭素移行の物理的制約として極めて具体的な実体です。しかし、この実体は「深刻な資源制約」として十分に伝わっていません。記事は脱炭素と水資源のトレードオフを指摘しながらも、この数字が意味する「生産量の減少リスク」「コスト上昇」「地域社会との軋轢」といった経済的・社会的な具体像を描き切れていません。66%という過半数の施設がリスク下にあるという事実は、単なる環境問題ではなく、重要鉱物の安定供給そのものを脅かす構造的な問題です。次の観測点は、この水リスクが具体的にどの鉱種の、どの工程で、どれだけの生産量に影響するのかという精緻な分析です。日本企業にとっては、調達先の水リスク評価と、鉱山現場での水使用効率や水循環技術への投資が急務であると同時に、リスクの高い地域からの調達依存を分散する戦略が不可欠です。この構造は数字の奥にある「生産制約の具体化」を待っている状態です。

世界の主要な鉱山・金属企業が加盟する国際金属・鉱業評議会(ICMM)はこのほど、世界の鉱業・金属関連施設の66%が水ストレスや干ばつなどの水リスクに直面しているとの報告書を公表した。鉱物は脱炭素には不可欠だが、その生産には大量の水が必要で、水リスクによる制約を受ける。一方、国連大学は重要鉱物の採掘が水不足や環境負荷をもたらす実態を指摘しており、脱炭素と水資源をめぐる課題が浮かび上がっている。(オルタナ編集部・川原莉奈) 電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの普及に伴い、リチウムやコバルトなどの重要鉱物の需要は世界的に拡大している。これらを含む鉱物・金属資源は、低炭素社会への移行を支える重要な基盤だが、採掘や加工には水資源が必要で、水リスクが生産条件の制約となっている。 ICMMは、鉱山や製錬所、精製所、工場など世界に約1万2000カ所ある鉱業・金属関連施設を分析した。その結果、それら施設の65.7%が、少なくとも1つの物理的水リスク指標で高いリスクにさらされていることが分かった。 物理的水リスク指標には、水ストレス(水需要と利用可能な水資源のバランスが逼迫している状態)や水資源枯渇、干ばつ、洪水、水供給の年々変動などが含まれる。 こうした鉱業・金属業界における水リスクは世界全体に及ぶ一方、その性質は多様であり、地域や鉱種によって異なる。 一部の施設では水をめぐる競争が慢性化しているが、別の施設では干ばつや洪水、あるいは年ごとに予測しにくい水の供給状況に直面している。 一方、国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)は2026年4月、報告書「Critical Minerals, Water Insecurity and Injustice(重要鉱物、水不安、そして不正義)」で、重要鉱物の採掘そのものが水不足や環境汚染につながっている実態を指摘した。 報告書では、エネルギー転換が不可欠であることを前提としながらも、水不足や環境汚染などの影響が貧困層や先住民など採掘地域の脆弱な人々に不均衡な負担として押し付けられていると分析している。 今後のエネルギー転換では、資源確保だけでなく、採掘地域の水資源や環境への影響をどう管理するかが問われている。 早稲田大学理工学部卒業後、大手自動車関連メーカーに7年勤務。その後、 新たな分野に挑戦するためフリーランスへ転身し、大手出版社でエディター、ライターを経験。さらにNPOや国際協力NGOなどでWebマーケティング・デザイン、広報などを担当し、社会課題解決への関心を深める。サステナ経営検定2級合格。

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