合成メタン=骨太の方針に明記、コスト低減と国際ルールがなお課題|国内
専門家の視点
合成メタンが骨太の方針に明記された背景には、既存インフラをそのまま使える「ドロップイン燃料」としての優位性があります。これは、実体として天然ガスからの転換を進める過程で、段階的に脱炭素燃料へ移行するという物語の強みです。しかし、現時点ではコストがLNG比で数倍高いという実体が、普及の最大の壁として立ちはだかっています。ここには、物語が実体を先取りしている構造が明確に見えます。 さらに、国際的なCO2削減価値の帰属ルール未整備という制度面の課題は、期待先行のリスクをはらんでいます。大手企業が高い価格で購入する動きはありますが、これは限定的な市場での期待先行であり、実体としてのコスト低減や国際ルールの確立が伴わなければ、プロジェクトの最終投資判断が遅れる可能性が高いです。見逃せない隠れた前提は、「ドロップイン」であること自体が自動的に普及を促進するという思い込みです。実際には、導入コストがゼロでも、燃料価格が高ければ需要家は移行しません。時間軸で見れば、この政策は2030年以降に効いてくる構造であり、即効性はないと判断すべきです。
内閣が7月21日に閣議決定した「骨太の方針2026」において、2050年カーボンニュートラル実現に向けた燃料転換の対象として合成メタンが明記された。日本ガス協会(JGA)は工場のボイラー用燃料などが都市ガスに置き換わることも含め、既存の天然ガスも次世代型の天然ガスも脱炭素化に貢献すると位置付けてもらえたことを「業界としてポジティブにとらえている」という。e-methaneに代表される合成メタンは既存のLNG基地や導管、ガス機器をそのまま活用できる「ドロップイン燃料」としての優位性が高い。天然ガスへの燃料転換を進めながら、将来的にはe-methaneやバイオガスへシームレスに移行することが、都市ガス業界の描く脱炭素化シナリオだ。 ただ、合成メタンの普及には依然として課題が残る。最大の壁はコストで、現状のe-methane価格はLNGに比べて数倍高いとみられている。JGAによると、大手海外企業のなかにはカーボンニュートラルに資するエネルギーを価値のあるものとして捉え、「値段を出して買っている」向きもあるというが、東京ガスや大阪ガスが北米で進めるe-methaneプロジェクトは近年の物価および人件費の高騰に加え、中東情勢の悪化で最終投資決定(FID)の遅れが危ぶまれる。また、海外で製造したe-methaneのCO2削減価値を、生産国と利用国のどちらに帰属させるかという国際ルールも未整備だ。JGAは日本政府と協力しながらIPCC(気候変動に関する政府間パネル)ガイドラインやGHG(温室効果ガス)プロトコルといった国際的な排出量算定ルールの見直しに関与しつつ、初めは二国間でルールを定める方策も視野に入れているという。
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