グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット、民間企業の参加者数が過去最多を記録 ─ ビジネスにおける自然資本の重要性が浮き彫りに - IUCN日本委員会
専門家の視点
本サミットで民間企業の参加が過去最多を記録したという数字そのものは、ネイチャーポジティブへの関心がビジネス領域で高まっている実体を反映しています。しかし、この記事の構造には「物語先走り」のリスクが潜んでいます。熊本宣言は測定指標の標準化や報告フレームワークの相互運用性を強調していますが、これらの制度設計はまだ議論途上であり、企業が現場で使える具体的な評価手法やデータ基盤の実装が追いついていない現実があります。また、参加企業の3分の2が金融・保険・エネルギーなど特定セクターに偏っている点は、一次産業やサプライチェーン下流の中小企業など「誰が実行するのか」の実行レイヤーが欠落している可能性を示唆します。時間軸の観点では、COP17での進捗評価を本年が「極めて重要な年」と位置づけつつも、宣言の内容は目標設定と緊急性の強調に留まり、短期・中期で可逆的なアクション計画が示されていません。記事が当然としている「ネイチャーポジティブへの移行が一刻を争う課題」という前提は、企業の投資判断や規制の実効性が自然資本の測定手法の精度に依存しているという逆因果を隠しています。
本日、日本・熊本市において第2回グローバル・ネイチャーポジティブ・サミットが閉幕し、参加組織の合意のもとで「熊本宣言」が採択された。同宣言は、生物多様性の損失を食い止め、回復へと反転させるというネイチャーポジティブな目標に向け、とりわけビジネスや金融を含むあらゆる分野での変革を加速させる緊急性を強調している。さらに、世界共通の約束である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の実施と達成をより強固なものにするための共同の決意を表明した。 サミットには世界各国のリーダーや代表者ら2,725名が一堂に会した。その顔ぶれは政府代表や国際機関、市民社会、学術界、メディアなど多岐にわたり、中でもビジネスおよび金融セクターからの参加者が全体の3分の2を占めた。参画した産業分野も金融、保険、農業、エネルギーから、食品、ヘルスケア、建設、運輸にいたるまで多岐にわたった。 このように多様かつ多数の参加者が集まったことは、ネイチャーポジティブがもたらす社会的・経済的な大義と妥当性への認識が急速に高まっていることを示している。同時に、企業の行動を世界共通の生物多様性目標と整合させ、資金を動員し、自然だけでなく人々にも豊かな実りをもたらすようなネイチャーポジティブへの移行が、一刻を争う課題であることを浮き彫りにした。 全体会議や分科会は、ネイチャーポジティブな社会と経済を構築するために必要な、世界的な目標と具体的なアクションの双方を深く議論する極めて重要な機会となった。複数のセッションにおいて、ネイチャーポジティブな成果を測定し推進するための科学的根拠に基づいた一貫性のあるアプローチの重要性や、各種の基準、報告・情報開示フレームワーク間における相互運用性の確立に焦点が当てられた。 ネイチャーポジティブな未来に向けた熊本の志を示す「熊本宣言」は、80以上の組織(その半数は民間企業)によって署名され、世界の目標を測定可能な現場のアクションへと変換するというサミット参加者の固い誓いを表している。10月にアルメニアのエレバンで開催される国連生物多様性条約COP17を控え、196の政府代表が2030年目標や行動ターゲットに向けた進捗を評価する本年は、生物多様性にとって極めて重要な年に当たる。 ネイチャーポジティブな未来を達成するため、熊本宣言は、企業の環境への影響や依存度、さらには自然の状態を測定するため、科学的根拠に基づきつつも実務的で意思決定に直結する標準化された評価指標および測定手法のもとに、政府、規制当局、企業、金融機関が一丸となって行動を起こす重要性を強調している。また、生物多様性世界枠組のターゲット15で求められている通り、自然関連の課題に関する評価、目標設定、移行計画、および企業報告について、世界的に一貫した基準に基づくアプローチに向けて市場全体の整合を図ることを強く呼びかけている。 本サミットは、高円宮妃殿下のご臨席の栄を賜るとともに、ネイチャーポジティブ・イニシアティブ(以下NPI)および国際自然保護連合(IUCN)日本委員会の主催、ならびに日本政府の3つの省(環境省、農林水産省、国土交通省)の共催のもと、日経BPを運営事務局として開催された。 本サミットのプログラムには、元ユニリーバCEOのポール・ポルマン氏、王子ホールディングス株式会社の磯野裕之代表取締役社長執行役員CEO、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社取締役社長グループCEO舩曵真一郎氏、日本郵船株式会社の筒井裕子常務執行役員、ブラジルのヴァーレ社でサステナビリティ担当エグゼクティブヴァイスプレジデントを務めるグラジエレ・パレンチ氏、国際サステナビリティ基準審議会理事の小森博司氏、自然関連財務情報開示タスクフォースCEOのトニー・ゴールドナー氏、中国のアジアインフラ投資銀行で経済学者を務めるジンユー・ガオ氏、国連生物多様性条約事務局長のアストリッド・ショーメーカー氏、国連生物多様性条約COP17議長国特別使節のムヘル・マルガリャン大使など、国内外の経済界や社会のあらゆる分野から第一線で活躍するリーダーたちが登壇した。さらに、国連事務総長海洋担当特使のピーター・トムソン氏、世界経済フォーラム共同議長のアンドレ・ホフマン氏、アジア開発銀行で自然・環境局長を務める渡邊洋子氏、および今後開催される生物多様性COP17と気候変動COP31のホスト国であるアルメニアとオーストラリアの環境大臣によるビデオメッセージも寄せられた。 また本日、短編映画『Becoming Nature Positive』のグローバル配信が開始され、YouTubeやWaterBearにて、どなたでも無料で視聴可能となる。なお、screening toolkitを利用することで、各組織において引き続
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