企業動向

【国際】トランジション鉱物の人権・環境被害、ワースト10社はすべて中国企業。BHRC

2026-07-27
国際NGOがトランジション鉱物を巡る中国企業の海外投資で人権・環境被害が大きいワースト10社を公表した。

専門家の視点

トランジション鉱物の採掘を巡る人権・環境被害の報告で、ワースト10社すべてが中国企業という結果が出ました。ここでの構造的な論点は、グローバルな脱炭素の物語と現実の間に潜む「実行レイヤーの非対称性」です。脱炭素を推進する国際社会は、責任ある鉱物調達やESG基準を掲げますが、実体としてサプライチェーンの最上流である鉱山開発では、価格競争力と量の確保を優先せざるを得ない構造があります。中国企業は国家戦略と一体でリスクの高い地域に投資し、結果として負の外部性が可視化されたと言えます。ここで問い直したいのは、この報告が当然としている「人権と環境の基準は先進国が主導するべきだ」という前提です。別の見方として、中国が供給を独占するリスクを避けるために、西側諸国が同様のリスクを取った複数国での鉱山開発を実現できるのか、という現実的な課題があります。物語先走りの構造です。国際的な規範は先行しているが、それを遵守しながら十分な量の鉱物を確保する経済合理性と技術はまだ追いついていません。

国際人権NGOのビジネスと人権センター(BHRC)は7月16日、再生可能エネルギー、電化、バッテリー技術に使用されるトランジション鉱物を巡る中国企業の海外投資に関して、人権及び環境被害の動向をまとめた報告書を発表した。2021年以降、被害の申し立ては年々増加しており、サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの実効性確保が急務となっている。 【参考】【国際】鉱物採掘での人権侵害申し立て、前年比73%増加。企業・投資家に警鐘。BHRC(2026年7月10日) 同報告書によると、2023年から2025年の間に、中国企業のトランジション鉱物投資に関連する人権・環境被害の申し立ては326件記録され、2021年からの累計は434件に達した。申し立て全体の約65%が上位10社の中国企業に集中している。具体的には、Zijin Mining(紫金鉱業)、Tsingshan Group(青山グループ)、Zhejiang Huayou Cobalt(浙江華友コバルト)、China Nonferrous Metal Mining(CNMC)、Jiangsu Delong Nickel Industry(江蘇徳龍ニッケル業)、CMOCグループ(欒川モリブデン集団)、Sinomine Resource Group(中鉱資源集団)、CHALCO(中国アルミニウム)、China Minmetals(中国五鉱集団)、Wanbao Mining(万宝鉱産)の10社。 国別の申し立て件数では、インドネシアが96件で最多。次いで、コンゴ民主共和国(DRC)が52件、ミャンマーが36件と続いた。鉱物別では、インドネシアにおける産業拡大を背景にニッケルが91件で最多となり、銅(72件)、コバルト(45件)、リチウム(39件)、レアアース(35件)と続いた。また、サプライチェーンの段階別では、採掘段階での申し立てが全体の66%(213件)を占めており、製錬・精製段階が約25%(80件)、プロジェクト開発段階が9%(30件)となっている。 被害を受けた対象別の分析では、地域社会への影響が179件、環境への影響が169件、労働者への影響が143件となった。具体的な被害内容としては、水質汚染(102件)や労働安全衛生(100件)、地域住民の生計への悪影響(85件)が上位を占めている。特に、インドネシアのニッケル製錬所等では、中国人労働者を主とする移民労働者に対する労働災害や強制労働、賃金に関する申し立てが37件確認されている。事業活動に懸念を表明した環境・人権擁護者に対する攻撃や脅迫も、2023年から2025年の間に18件記録された。 企業側の改善の兆しとして、被害申し立てに対する回答率が過去の18%から27%へと上昇していることが示された。一方で、申し立て件数の多い上位3社がいずれも「人権方針」を公表しているにもかかわらず、被害が多発している事実を指摘。方針を策定するだけでなく、企業とサプライチェーン全体での実効性のある実装と透明性の向上が強く求められていると警鐘を鳴らした。 同報告書は、各国政府、中国政府、ホスト国政府、業界団体、サプライチェーン上の企業、投資家・金融機関に向けてそれぞれ提言をしている。サプライチェーン上の企業に対しては、「人権・環境デューデリジェンスと方針の確立」「サプライチェーンの透明性とトレーサビリティの確保」「ステークホルダーとの有意義な協議とFPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく合意)の徹底」「ジェンダー特有のリスクへの対応」「紛争・高リスク地域での高度なデューデリジェンス」「効果的な苦情処理・救済メカニズムの構築」の6つを挙げている。投資家・金融機関向けには、投資先に対する高度なデューデリジェンスの要求、ダイベストメントを含む影響力の行使、苦情処理メカニズムの要求の3点を挙げている。 【参照ページ】Shifting ground: Human rights, Chinese investment and the rush for transition minerals ※ 閲覧チケットは翌月への繰り越しはできません。 【無料会員向け】有料記事の閲覧チケットの詳細はこちら 株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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