関西電力が「原子力PPA」に乗り出す、国内では初 - ニュース - メガソーラービジネス plus : 日経BP
専門家の視点
関西電力が国内初の「原子力PPA」に乗り出すという動きは、実体と物語、期待の間に構造的なズレを抱えています。まず実体として、原子力発電は運転中であればCO2を排出しない電源であり、電力需要家がPPAを通じて長期固定価格で調達できる点は、価格変動リスクを抑えたい企業にとって経済合理性があります。しかし、この「原子力PPA」が新たなカーボンニュートラル電源の追加を意味するのかは、物語の曖昧さです。既存の原発からの電力供給は、発電量全体の増加を伴わないため、実質的に新しい脱炭素電源の創出にはなりません。この点で「物語先走り」の構造が認められます。市場や投資家の期待は、原子力を脱炭素手段として再評価する流れに敏感に反応しやすいですが、現状では新増設やリプレースの具体的な計画が伴わないため、期待先行の側面も強いです。また、隠れた前提としてPPAが「新規性」を強調する一方で、原子力の廃炉や核燃料サイクルの課題といった実体が省略されています。この構造は、既存インフラを「カーボンニュートラル」とラベリングする戦略ですが、追加性のない取引であることの認識が需要家側に不足するリスクがあります。
関西電力は、既設の原子力・水力発電所を対象にしたオフサイト型PPA(電力購入契約)スキームによる電力供給に乗り出す。7月9日、需要家や小売電気事業者などの法人顧客を対象とした問い合わせ窓口を開設したと発表した(図1)。 これまで国内でのPPAスキームによる電力供給は、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギー電源が中心だった。既設の原子力・水力発電を活用することで、季節・天候・時間帯に影響され難い安定的な脱炭素電力を供給する新たなスキームを実現するという(図2)。 関西電力は、既設の原子力・水力発電所を合計約1000万kW保有しており、顧客のニーズに応じて、太陽光・風力・原子力・水力を含めた多様な電源ポートフォリオを構築できる。なお、原子力を活用したPPAが実現すれば国内初となる。 オフサイト型PPAによる電力供給は、非化石証書や環境メニューと異なり、実際に使用する電気そのものの脱炭素に貢献できる。また、市場価格の変動を受け難く将来の電力コストを見通しやすくなる。自社敷地内のスペースに制約がある場合でも脱炭素電力を活用しやすくなる点もメリットに挙げている。 国内の原子力発電所は、東日本大震災に伴う原発事故によってすべて稼働を停止していたが、関電管内では、美浜発電所3号機、高浜発電所1~4号機、大飯発電所3号、4号機の7つの原子炉が再稼働済みで、合計657.8万kWの設備が電力供給可能な状態にある。また、水力発電所は、揚水を除き148カ所・合計約338.6万kWの設備を所有している(図3)(図4)。 米国では、マイクロソフトなどが、原子力発電所と直接、電力供給契約を締結して、データセンターの電源を確保するなど、再生可能エネルギーと並ぶカーボンニュートラル電源として原発を評価する動きが顕在化している。 ただ、既存の原発からPPAで電力を調達した場合、新たなカーボンニュートラル電源を増やすことに貢献する「追加性」に乏しいことが、需要家にどのように受け入れられるのかが課題になる。また、これと関連して、原子力・水力の電力を特定需要家と大規模に供給契約を契約した場合、関電管内の全電源平均によるCO2排出原単位が上昇することになるため、既存の一般需要家のCO2排出量が増えることに対し、関電がどのように対応していくのかも注目される。 Copyright 2026 Nikkei Business Publications, Inc. All rights reserved. このページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。著作権は日経BP、またはその情報提供者に帰属します。 掲載している情報は、記事執筆時点のものです。
本文は配信元の記事から取得した抜粋です。
配信元の記事を読む →