経団連:投資牽引型経済の実現~将来世代に明るい未来を~ (2026-07-24)
専門家の視点
経団連の提言は、国内民間設備投資を2040年度に250兆円へ拡大し研究開発投資の対GDP比5%を掲げる壮大なビジョンですが、ここには「物語先走り」の構造が看過できません。実体として、日本の国内設備投資は過去30年横ばいであり、賃金上昇も持続的な成長軌道に乗っていません。経団連が期待する「企業のマインドセット転換」は、具体的なKPIやフェーズ分けなく語られ、誰がどのタイムラインで実行するのかという実行レイヤーが曖昧です。また、エネルギー安定供給とGX推進を並列に掲げますが、両者はトレードオフを含むにもかかわらず、その調整メカニズムには触れていません。隠れた前提は「企業が自発的に投資拡大すれば成長する」という命題です。しかし現実には、人口減少と国内市場縮小の中で、企業が国内回帰に動く経済合理性は必ずしも自明ではありません。日本企業のGX人材への示唆としては、この提言の実行には産業政策と財政規律の両立、そして国際比較で劣後するエネルギー価格の構造改革が不可欠です。次の観測点は、具体の規制改革や省庁再編の工程表が政府から提示されるかどうかです。
現在、わが国は、大きな岐路に立っている。地政学、人口動態、エネルギーはじめ様々なリスクと制約要因を克服し、イノベーションの創出を通じて、持続的に強靭で成長し続ける経済社会を、将来世代に残すことができるのか。その鍵は、企業・経営者が、自らのマインドセットを転換し、国内の設備投資、研究開発投資、賃金引上げを含む人的投資を積極的に拡大し、潜在成長率の引き上げを牽引していくことにある。 経団連は、国内民間設備投資額を2040年度に250兆円に拡大する目標を掲げ、「投資牽引型経済」への転換を主導し、その確立により「成長と分配の好循環」の実現を目指す。とりわけ研究開発投資は、官民合わせて「対GDP比5%」という世界トップ水準に引き上げ、2040年に年間投資額50兆円を達成すべきである。これに向け、①科学技術立国の実現、②税・財政・社会保障の一体改革、③人的投資の拡充・促進に向けた労働改革、④地域経済社会の活性化、⑤自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化と経済安全保障への配慮、⑥エネルギーの安価で安定的な供給確保とグリーン・トランスフォーメーションの推進、⑦コーポレートガバナンス改革に重点的に取り組む。 企業は自社の経営資源の戦略的配分を通じ成長投資を果敢に推進する。政府においてはいかにして国内需要を持続的に創出し、これまで築き上げてきた同志国とのネットワークの活用を通じて経済安全保障も確保しながら、わが国の産業基盤や経済社会の自律性を強化していくかが肝要である。 経団連夏季フォーラム2026では、「投資牽引型経済の実現~将来世代に明るい未来を~」を統一テーマに、活発な議論を行った。4名の講師との対話を通じ、わが国の対外関係・安全保障、産業構造、科学技術等を取り巻く内外の環境変化や課題の本質への理解を深めた。そのうえで、分科会では、「エネルギー分野を含む、絶え間ないイノベーション・産業競争力強化」「骨太方針2026を踏まえた税・財政・社会保障のあり方」「労働改革の観点からの企業の自立的な改革推進」「地域経済社会の活性化」の4つの切り口から、民主導による投資牽引型経済の実現に向けた方策を検討した。 これらの議論を踏まえ、経済界の役割や政府への期待を下記のとおり取りまとめた。 経済界は、フロントランナーとして、絶え間ないイノベーションの創出に資する成長投資を積極的に推進するとともに、国際的な競争力・レジリエンス強化との両立を図り、国内回帰を含め国内のサプライチェーンの強化に努める。 政府には、国土に関する計画の抜本的見直し等を通じた国内需要創出への主導的役割とともに、規制改革、標準化を含めた科学技術・産業政策を一体的に推進できる体制を整備するため、省庁再編等を期待する。 加えて、技術の発展に起因する課題への対応や、技術の受容・社会実装・国際的な共感と信頼の醸成を図る上でソフトパワー(思想・哲学、デザイン、文化、コンテンツ等)が重要であり、わが国の強みでもある。こうしたソフトパワーの更なる充実・ナラティブとしての発信を官民連携で積極的に推進する。 経団連は、将来世代への責任を果たすべく、本総括に挙げた事項を中心に、投資牽引型経済の実現に精力的に取り組む所存である。
本文は配信元の記事から取得した抜粋です。
配信元の記事を読む →