応札不足が続く需給調整市場にテコ入れ策 一部商品の上限価格を引き下げへ
専門家の視点
需給調整市場で応札不足と調達費用高騰が同時に発生している構造は、「価格が高いのに売り手が来ない」という一見矛盾した状態を示しています。この背景には、発電事業者が市場メカニズムに応じて参入するという前提で設計された制度と、実際の送配電ネットワークの物理制約や人材不足といった実体との間にズレがあります。 資源エネルギー庁の上限価格引き下げは、調達費用抑制という短期の期待に対応した施策ですが、本質的には「価格が高いから供給が増える」という古典的な市場理論が、電力をリアルタイムで調整する需給調整市場では成立しにくい実態を物語っています。発電所の起動時間や系統制約、人材確保の難しさなどが応札の壁となっており、価格だけでは解決できない領域です。 ここでの構造的な論点は、制度導入が「市場に任せれば最適化される」という物語で先行し、実行レイヤーである系統運用者や発電事業者の現場制約が後追いになっている点です。上限価格引き下げは費用抑制に寄与する一方、応札不足をさらに深刻化させる可能性も否定できません。
多くの商品・エリアで応札不足による約定量の未達が発生し、調達費用の高騰などが課題となっている需給調整市場。資源エネルギー庁はこうした状況を受け、一分商品の上限価格を引き下げる方針だ。 電力の周波数を維持し安定供給を実現するためには、適切な調整力の確保が不可欠である。調整力の効率的な調達を目的として、2021年に需給調整市場を開設し、2024年4月には全ての商品(一次・二次 ・二次 ・三次 ・三次 、一次~三次 の複合商品)の取り引きが開始された。しかしながら、需給調整市場では、多くの商品・エリアで応札不足による約定量の未達が発生し、調達費用の高騰も大きな問題となった。 このため、調整力応札量の増加策の一つとして、2026年度(※)から、従来の週間商品(一次~三次 、複合商品)を前日取引へ移 させるとともに、取引単位は従来の3時間ブロックから30分コマへと変更(30分化)された(※正確には、一次~三次 の前日取引が開始される2026年3月13日の取引(3月14日受渡分)以降)。 また、従来は3σ相当量を募集してきた一次・二次 ・複合商品の募集量を1σ相当量まで削減するとともに、調整力調達費用の高騰を防ぐため、上限価格を19.51円/ΔkW・30分(=39.02円/ΔkW・h)から15円/ΔkW・30分(=30円/ΔkW・h)へと引き下げた。 資源エネルギー庁では、前日取引化後の市場への応札状況をモニタリングし、市場における競争状況に改善が見られない場合、募集量の見直しや上限価格を10円ΔkW・30分、7.21円/ΔkW・30分へと段階的に引き下げることとしている。 「電力安定供給ワーキンググループ(WG)」の第4回会合では、2026年7月3日までの取引実績を報告するとともに、上限価格の引き下げ案が示された。 需給調整市場における取引実績の確認対象期間は、図1のように、前日取引化の前後28日間で区切り、前日取引化前(2/14~3/13)、期間 (3/14~4/10)、期間 (4/11~5/8)、期間 (4/11~5/8)、期間 (4/11~5/8)としている。 市場調達費用抑制のため、2025年6月以降、週間商品(一次・二次 ・二次 ・三次 ・複合商品)において、余力による調整力確保見込み量を踏まえて市場の募集量を削減する、市場外調整力の控除を行っていた。 前日取引化に伴い、市場外調整力の控除を終了したことにより、複合商品の募集量が一旦増加したが、東京・中国エリアでは揚水随意契約により募集量を減少させたことにより、市場全体での募集量も減少傾向にある。 また期間 (6月)は、期間 ~ (3月~5月)と比べ、電力需要が増加したことや梅雨期の太陽光発電の出力低下により、火力電源の起動量が増え、稼働済み電源の持ち下げ等による需給調整市場への応札が増加した。 これにより、複合商品・一次のいずれも、応札量は増加傾向、不足率は減少傾向にあるが、コマ単位では不足の発生が継続している。 なお、期間 ~ はいずれも電力需要が少ない期間(端境期)であり、今後、高需要期に向けて、端境期に作業や点検等を行っていた電源が稼働し、供給力として活用可能な電源が増加する見通しである。ただし、需給調整市場の前日商品は、JEPXスポット市場の後に取引されるため、需給調整市場への応札量は、JEPXでの約定結果次第で増減することとなる。 このため、発電事業者へのヒアリングでは、高需要期における需給調整市場への応札量の増減や応札価格の水準について、予測は困難との回答が多く寄せられている。 Copyright ITmedia, Inc. All Rights Reserved. ITmediaはアイティメディア株式会社の登録商標です。 メディア一覧 | 公式SNS | 広告案内 | お問い合わせ | プライバシーポリシー | RSS | 運営会社 | 採用情報 | 推奨環境
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