再エネ・技術

着床式洋上風力のコスト目安は「30円/kWh程度まで」 各種制度も一部見直しへ

2026-07-22
洋上風力発電のコスト目安が30円/kWh程度まで引き下げられる見通しであり、政府が関連制度を一部見直す方針をまとめた。

専門家の視点

着床式洋上風力のコスト目標を「30円/kWh程度」と明示したことは、これまでの曖昧なコスト感に明確な物語を与えたと言えます。しかし、実体として物価上昇や円安、金利上昇が事業収益を圧迫する構造は非常に具体的であり、この目標値は物語先走りのリスクを内包しています。30円という水準は経済合理性を示す一方、制度見直しのスピードと、実際の事業者の収益性や資金調達環境との間にタイムラグが生じる点が核心的なズレです。また、誰がそのコストを実現するのか、という実行レイヤーが明示されておらず、事業者任せの部分が残ります。期待レイヤーでは、投資家がこの目標を過度に織り込み、実現不可能な案件に資金が走る懸念があります。隠れた前提は「30円が達成されれば洋上風力は十分に競争力を持つ」という点です。しかし、系統接続や揚水・蓄電池のコストを含めた社会トータルのコストで評価すれば、単独のkWh単価だけでは不十分です。次の観測点は、制度見直しの具体化と同時に、事業者がこの目標を現実的なリターンと結びつけられるかどうかです。

物価や金利の上昇、円安の進行などの影響を大きく受けている洋上風力発電事業。政府の各委員会で検討された今後の対応方針や、関連制度の変更内容についてまとめた。 洋上風力発電は2030年までに10GW(1,000万kW)、2040年までに30~45GWの案件を形成することが政府目標として示されるなど、導入ポテンシャルが高い国産エネルギーであり、再エネの主力電源化に向けた重要な柱である。 しかしながら、物価や金利の上昇、円安の進行により、投資額が大きく総事業期間も長期間である洋上風力発電の開発は困難となっており、再エネ海域利用法に基づく第1ラウンド公募で3区域を落札した三菱商事コンソーシアムは、2025年8月にこれらの事業から撤退した。 他方、2026年2月の米国・イスラエルによるイランへの攻撃を発端とした中東情勢の悪化により、エネルギー安全保障という観点から、世界的に洋上風力事業の開発が再加速されている。 このため、資源エネルギー庁「洋上風力促進ワーキンググループ(WG)」と国土交通省港湾局「洋上風力促進小委員会」の合同会議では、当面の案件形成の考え方を示すとともに、調達価格等算定委員会では価格調整スキームの適用について検討を行った。また電力安定供給WGでは、長期脱炭素電源オークションの第4回入札における洋上風力の上限価格案等が示された。 洋上風力発電は、初期投資が数千億円、運転維持費が数十億円/年となるなど投資額が非常に大きく、総事業期間は約40年間と長いため、物価・為替・金利の変動は、事業の採算性に大きな影響を与える。 第3ラウンド公募が開始された2024年1月の直近1年間(2023年1月~12月)の平均値から2026年3月までの期間において、物価変動率(※後述)は約19%上昇している。 また為替レートについては、第3ラウンド公募が開始された2024年1月から2026年5月までの期間においてUSD/JPYが約9%、EUR/JPYが約16%といずれも大きく円安が進んでいる。現時点、日本国内には大型風車メーカーが存在せず、風車のナセル、ブレード、発電機等の主要構成機器については欧州から輸入する必要があるため、円安は洋上風力建設費用を物価指数の変動以上に増加させる要因となる。 また、洋上風力事業は多額の借入を必要とするが、同期間における金利(20年国債)は約150%上昇しており、事業費全体の増加要因となっている。 資本費のうち、風車に次いで大きい割合を占める洋上・陸上工事に影響する建設分野の物価は、資材価格の高騰や労務費の上昇等によって、第3ラウンド公募が開始された2024年1月から2026年3月までの期間において、約9%上昇している。また、世界的な送変電設備の需要増加に伴い価格も上昇しており、特に送電ケーブルの価格は、原材料となる銅価格の上昇もあり、同期間において約67%上昇している。 Copyright ITmedia, Inc. All Rights Reserved. ITmediaはアイティメディア株式会社の登録商標です。 メディア一覧 | 公式SNS | 広告案内 | お問い合わせ | プライバシーポリシー | RSS | 運営会社 | 採用情報 | 推奨環境

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