ガバナンスコード5年ぶり改訂: 解釈指針で取締役会の機能強化など図る
専門家の視点
このガバナンスコード改訂は、GX・脱炭素分野において「物語先走り」と「物語欠落」が同居する構造を示しています。実体として、気候変動や資源制約は企業のリスクと成長機会として既に顕在化していますが、今回の改訂では「経営資源の配分」や「サイバーセキュリティリスク」といった抽象的な枠組みの中でGXが明示的に位置づけられていません。物語(説明)の側面では、原則のスリム化と解釈指針の新設により、形式開示からの脱却という方向性は明確です。しかし、GXに関する具体的なKPIや実証プロセスが欠落しており、企業が何を実行すべきかの物語が不十分です。期待(市場・投資家の反応)は、ESG投資の拡大や脱炭素宣言の増加という形で先行していますが、その期待に応える具体的なガバナンス要件がコードに組み込まれていません。ここに「期待先行」の構造があります。隠れた前提は「取締役会が適切に機能すればGX投資が自動的に促進される」という考え方です。しかし、実際には取締役会が気候リスクを評価し、成長投資としての脱炭素を戦略に落とし込むための専門性やデータ基盤が不足しています。
金融庁と東京証券取引所は21日、上場企業の行動指針となる「コーポレートガバナンス・コード(CGC)」の改訂版を公表した。改訂は2021年以来5年ぶりとなる。企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を後押しするため、改訂前に83あった原則数を30に減らし、従来の「形式的な開示」からの脱却を図る。新たに「解釈指針」を設けて取締役会の機能強化などを打ち出し、企業と投資家の緊張感のある対話を促す。(オルタナ副編集長=京正裕之) CGCの総数は83(基本原則 5/原則 31/補充原則 47)だったが、改訂版では30(基本原則4/原則26)に減った。一方、各原則に対応する「解釈指針」を新設した。 金融庁はCGCの改訂版について、「コンプライ・オア・エクスプレイン(原則を実施するか、実施しない理由を説明する)」の対象となる原則は、概念的・抽象的な内容に限定すると説明。その上で、具体的な対応は新設する「解釈指針」で示す形に改めた。 同庁企業開示課の専門官はオルタナに対し「原則の数が減り『スリム化』とも言われるが、金融庁としては(原則を示した上で企業に説明責任を求める)『プリンシプル化』という考え方をしている。企業には持続的に成長するために、投資家と緊張感のある信頼関係に基づいた対話を促していきたい」と述べた。今回の改訂では「企業の対応がむしろこれまでより大変になる可能性もある」とも指摘した。 金融庁は、原則・解釈指針の主な改訂内容として▽経営資源の配分▽取締役会の機能強化▽有価証券報告書の株主総会前開示▽ステークホルダーとの適切な協働――を挙げた。 経営資源の配分では、取締役会の役割・責務として、成長投資に向けた取り組みの重要性を強調した。具体的には、成長投資として研究開発や人的資本・知的財産などへの投資、事業ポートフォリオの見直しといった経営資源をどのように配分し実行するかを説明すべきだとした。 また、現預金などの金融資産が成長投資に有効活用されているかなど、経営資源の配分の実現に向けて検証を続けることなどを求めた。 取締役会の機能強化については、独立社外取締役の役割や責務、質・数の確保の重要性を強調したことに加え、コーポレートセクレタリーなどの事務局機能の強化を促した。 また、取締役会がリスク管理体制を整備する上で、サイバーセキュリティリスクや、経済安全保障を巡る環境変化に伴うサプライチェーン途絶リスク、技術情報の流出リスクなども考慮すべき内容として解釈指針に盛り込んだ。 このほか、有価証券報告書に関しては、株主総会前に提出することを原則に追記した。その上で、3週間以上前の提出が最も望ましいと補足した。ステークホルダーとの協働では▽人的資本への投資・適切な分配▽取引先との公正・適正な取引――を解釈指針に加えた。
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