再エネ・技術

AI拠点の地域分散、再エネがけん引

2026-07-21
再エネを活用した小型データセンターによるAI拠点の地域分散戦略について報じている

専門家の視点

AIデータセンターの電力問題に対し、再生可能エネルギーの豊富な地域に処理能力を分散させる「ワット・ビット連携」の動きは、実証段階から現実の事業化への転換点にあります。本件の核心は、首都圏の需要集中という実体と、再エネ地産地消という物語の間に、実行レイヤーであるデータセンターの拡張性と設置期間のギャップが存在した点です。IIJが2011年からコンテナ型データセンター(CDC)を運用し、約700ラック、4MWの実績を積み、2026年にはエッジDC「DX edge Cool Cube」を発売したことで、短工期・高拡張性の選択肢が具体化しました。これらの実体が確立したからこそ、九州電力との実証で「分散データベースや光高速通信といった複数の技術で知見が得られた」と結論できたのです。 この構造は「実体が翻訳されていない」タイプです。IIJのCDCは島根県松江市で14年の運用実績を持ち、消費電力を4割削減する省エネ技術も実証済みですが、これだけでは市場の期待を十分に喚起できませんでした。

高木 邦子(日経ESG シニアエディター) データセンターの電力問題の解決に向け、「ワット・ビット連携」が動き出した。分散型の基盤構築で先行する2社は、地域と共生しながら事業拡大を狙う。 インターネットイニシアティブ(IIJ)は九州電力など4社と共同で、人工知能(AI)対応の分散型デジタル基盤を構築する実証事業を展開する。九州の豊富な再生可能エネルギー由来の電力を活用した複数のデータセンター(DC)を設置・連携させ、電力(ワット)と情報処理能力(ビット)の利用効率を最適化する。国が推進する「ワット・ビット連携」の九州版という位置付けだ。 AIの普及によってDC市場が急拡大する中、需要が集中する首都圏では電力や用地の不足が課題になっている。ワット・ビット連携には、再エネが豊富な地域にDCを分散させ、電力や情報処理能力の地産地消を促すだけでなく、高速通信によって都市と融通し合う狙いがある。AI活用と脱炭素、地域振興を同時に実現することを目指す。 ワット・ビット連携では、送電ロスや通信遅延を抑えるため、再エネの近くに小型のDCを配置する。そこで注目されるのが、拡張性が高く短工期で稼働できるコンテナ型データセンター(CDC)や、さらに小型の分散型(エッジ)DCである。 IIJは2011年に島根県松江市に業界に先駆けてCDCを稼働させ、規模を拡大してきた。現在の収容能力は約700ラック(IT機器などを収納する棚)、受電容量は4MWである。直接外気を取り込む冷却方式を導入し、従来の空調方式に比べて消費電力を4割削減するなど省エネ技術を磨いてきた。 26年3月には分散型AI基盤を想定したモジュール型のエッジDC「DX edge Cool Cube」を発売した。AIサーバーは消費電力が大きく1台で10kW以上にもなるため、空調による冷却で45kW、液体による冷却(DLC)で60kWまで対応できるようにした。 九州でのワット・ビット連携の実証では、分散データベースや光高速通信など複数の技術でデジタル基盤を構築するための知見が得られたという。エッジDCがCDCよりも納期や拡張単位、設置面積で有利なことも確認した。 IIJネットワークサービス事業本部エンジニアリング事業推進部長の室崎貴司氏は、「今後、製造や流通、自動運転など地域内でのAI推論処理のニーズが増大する。機密データやリアルタイム処理を扱う企業を中心にデータセンター需要を開拓していく」と話す。 ワット・ビット連携を視野に入れたデータセンターとしては、26年4月に北海道苫小牧市で稼働開始した「美沢の杜AIコンテナパーク」も注目だ。1300坪の土地に2MW規模のCDCを設置し、順次10MWにまで増設する計画である。 2026年8月号機会へ転換、訴訟リスクに目配りも 企業を脅かすPFAS包囲網 日経ESG新刊書籍「経営者が語る 成長の源泉 ESG経営」

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