グリーンイノベーション基金事業/ 大規模水素サプライチェーンの構築/ 革新的な液化
NEDOのグリーンイノベーション基金事業において、革新的な液化技術を用いた大規模水素サプライチェーン構築の取り組みが行われている。
専門家の視点
水素キャリアとしてのMCH(メチルシクロヘキサン)を1ステップで合成するDirect MCH技術は、従来の気相水素化と比較してプロセスが簡略化される点が実体としての優位性です。しかし、この記事には「大規模水素サプライチェーンの構築」という壮大な物語が掲げられている一方で、実用化に向けた具体的な数値目標や実証規模、コスト競争力の検証が示されていません。現時点ではラボレベルの技術発表にとどまり、実体が物語に追いついていない「物語先走り」の構造と読めます。 隠れた前提として、この技術が「再生可能エネルギーで電力として利用可能な地域」に立地することが当然とされていますが、トルエンと水素の供給源、そして製造後のMCH分解設備との地理的連携が未定義です。実行レイヤーは研究機関に偏り、誰が実際にサプライチェーン全体を運営するのかが不明瞭な点が最大の課題です。 次の観測点は、技術のエネルギー効率実証と、同等品である既存の気相水素化プロセスとの経済性比較がいつ公開されるかです。現時点では、期待先行で市場が反応する段階にはなく、技術の実体が翻訳されるまで待つ必要があります。