NEC、GHG排出量の「一次データ」活用で削減困難な領域を1割減らす
専門家の視点
GHG排出量の一次データ活用によってスコープ3を約1割削減したというNECの発表は、実体としての算定精度向上と、物語としての「削減努力の反映」が一致した好例です。これまで多くの企業は二次データを用いることで、サプライヤーの実際の削減行動を評価できず、実態よりも排出量が多く見積もられる構造がありました。NECのハイブリッド算定方式はこの非対称性を解消し、削減努力を適切に可視化する手段を提供します。ただし、ここでの「削減約1割」は、実際の排出量が減ったのではなく、測定方法の変更による見かけ上の減少です。つまり、実体としての排出削減は今後のサプライヤーの行動にかかっており、一次データ導入はその前提条件を整えたにすぎません。見逃せないのは、この方式の実効性を支える「GreenGlobeX for Value Chain」システムの開発です。これは単なる算定手法の変更ではなく、サプライチェーン全体のデータ収集・検証を自動化する実行レイヤーを自社で構築した点で、他社が模倣するには大きな投資と時間を要します。
NECは、「一次データ」を活用してサプライチェーンの温室効果ガス(GHG)排出量の削減を目指す。サプライチェーンのGHG排出量は「スコープ3」と呼ばれる領域で、多くの企業は削減努力が反映されない二次データで算定を行う。NECはサプライヤーから集めた一次データを活用したことでスコープ3のGHG排出量を約1割削減した。(オルタナ輪番編集長=池田真隆) NECは7月16日、サプライヤーから収集したGHG排出量などの一次データを活用した独自の算定方式を開発したと発表した。この算定式を使ったことで、調達に伴うスコープ3(カテゴリ1「購入した製品・サービス」)のGHG排出量を約1割減らした。 企業のスコープ3算定では、一般的に環境省が公表する業界平均の排出原単位などの二次データを用いる方法が広く採用されている。 しかし、この方法では個々のサプライヤーが省エネや再生可能エネルギー導入などによって排出量を削減しても、その成果を十分に算定へ反映できないという課題があった。環境省も近年、一次データの活用を推奨しており、サプライヤー固有の排出原単位を用いることで削減努力を適切に反映できるとしている。 NECが開発した新たな手法は、サプライヤーから収集した排出量や売上高などの一次データと、従来の排出原単位などの二次データを組み合わせる「ハイブリッド算定方式」だ。 データの品質を確認したうえでサプライヤーごとの排出原単位を算出し、NECの調達実績に応じて排出量を計算する。新方式はGHGプロトコルのスコープ3基準への適合性について第三者機関のレビューを受けた。 実際に2025年度のNECグループのスコープ3カテゴリ1排出量を新方式で算定したところ、約343万4千トンとなり、従来の二次データ方式による約392万3千トンと比べて約12%少ない結果となった。 これは、サプライヤーによる排出削減の成果が排出量算定に反映されたためであり、結果については第三者保証を取得済みだ。 NECは今回の算定方式を支える仕組みとして、「GreenGlobeX for Value Chain(グリーングローブエックス・フォー・バリューチェーン)」というシステムを開発した。サプライヤーポータルやAIによる情報収集機能、調達システムと連携し、サプライチェーン全体の排出量を可視化する。今後は自社で蓄積した知見を活用し、顧客企業のサプライチェーン全体の脱炭素化支援にも展開していく考えだ。 株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。
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