[社説]製鉄の脱炭素に不退転で挑め
日本経済新聞の社説が、鉄鋼業界の脱炭素化に不退転の姿勢で挑む必要性を論じている。
専門家の視点
鉄鋼業界の脱炭素化は、水素還元製鉄やCCUSといった未確立な技術を前提としており、実体面では技術の実証段階と巨額の投資回収リスクが横たわっています。物語は「不退転の覚悟」という強いフレーミングで、国家戦略としての重要性を強調しますが、各社の具体的な工程表や導入規模のKPI、失敗時の代替シナリオは示されていません。ここには物語先走りの構造があります。期待面では、政府の支援表明やGX経済移行債の活用が先行し、市場や市民レベルの反応はまだ鈍いです。隠れた前提は「日本の鉄鋼メーカーが単独で技術開発を完遂できる」という点です。実際には、原料調達や水素供給網の整備を含むサプライチェーン全体の連携が不可欠であり、製鉄所の更新サイクルが10年単位であることを考慮すると、現行の技術ロードマップだけでは2030年代以降の実装が危ぶまれます。次の観測点は、経産省が示す官民協議の場で、どの企業がいつまでにどの規模の実証炉を稼働させるか、という具体性の有無です。日本企業は、技術開発と同時に、国際競争力の維持という両立しにくい二つの事実を同時に達成する戦略を求められています。