制度・政策

EU、温暖化ガスの排出量取引で規制緩和へ 脱炭素より企業負担の軽減優先

日本経済新聞 2026-07-17
制度変更の理解は、GX実務や企業対応の前提知識として重要です。

専門家の視点

EUの排出量取引制度(ETS)は、実体として既に十分な排出削減が進んでおらず、炭素価格が企業に過大な負担を与えているという認識が背景にあります。この規制緩和の動きは、脱炭素目標の達成よりも短期的な企業競争力の維持を優先する物語への転換を示しています。しかし、この物語は気候変動の物理的制約やパリ協定の目標と矛盾する可能性があります。市場の期待は、EUの炭素価格が下落し、クリーン技術への投資インセンティブが弱まることを織り込み始めています。ここでの隠れた前提は「企業負担の軽減がイノベーションを阻害しない」という点ですが、実際には炭素価格の低下は低炭素技術への投資回収を困難にし、結果として長期的な脱炭素を遅らせるリスクがあります。構造の中心は、短期的な企業保護の物語が気候変動という実体とズレる「物語先走り」の状態です。次の観測点は、この規制緩和がEUの2030年排出削減目標の達成スケジュールに具体的にどの程度の遅れをもたらすか、そして業界のどのセクターが最も恩恵を受けるかです。

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