EU、排出量取引制度を抜本見直し 削減ペース緩め産業界に「猶予」
専門家の視点
EUが排出量取引制度(EU-ETS)の削減ペースを緩め、産業界に猶予を与える見直しを打ち出しました。実体としては、現行制度で2039年ごろに排出枠がゼロになる想定が、脱炭素投資を条件に先送りされる構図です。ここで中心となる構造は「物語先走り」です。これまでのEUは、野心的な気候目標を掲げて市場に強い削減圧力をかけてきましたが、産業界の実体(技術成熟度や投資回収期間、エネルギーコストの国際競争力)が追いつかず、制度設計の現実的な修正を余儀なくされています。注目すべきは「脱炭素投資を条件」とした点で、単なる猶予ではなく、企業に対し実行レイヤーとしての具体的な行動(資金投入・設備転換)を求める制度的な手続きの非対称性が生まれています。導入目標は早いが、企業の実行能力や人材、サプライチェーン全体での調整が追いつかない典型です。時間軸で見れば、この見直しは2030年以降の削減カーブを緩やかにする一方、可逆性は低いと言えます。一度緩和した制度を再び厳格化するには、政治的合意コストが極めて高くなるからです。
メールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするブリュッセルにある欧州連合(EU)本部前ではためくEU旗=2026年4月18日、西尾邦明撮影 [PR] 欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は17日、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出に枠を割り当てて削減を促す排出量取引制度(ETS)の抜本的な見直しを発表した。削減ペースを緩めて産業界に時間的な猶予を与える一方、無償枠の割り当てでは脱炭素投資を条件とした。 現行の制度では2039年ごろに排出枠がゼロとなる見通しで、産業界は脱炭素を完了する必要があったが、31年以降の削減ペースを段階的に引き下げ、40年代に入っても制度を継続させる。 一方、鉄鋼や化学など脱炭素化が難しい産業に割り当てられていた無償枠については、その80%を脱炭素投資計画を提示した段階で、残りの20%をその投資が実行された段階でそれぞれ付与するしくみに見直す。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません この記事の続きを読むなら今がお得。初回1カ月無料+Visaギフトカードが当たる▶今すぐ登録
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