EU、排出量取引制度見直し案発表 企業の脱炭素移行に猶予
EU欧州委員会が排出量取引制度(ETS)の見直し案を発表し、域内企業のCO2排出認定期間を延長する一方で脱炭素移行に猶予を与える内容
専門家の視点
EUのETS見直し案は、「実体」として企業の排出削減が物理的に進まない現実に対し、「猶予を与える」という物語で調整を正当化しています。しかし、見直しの核心は削減目標の緩和ではなく、排出権の供給量を増やさず既存枠の活用期間を延ばす点にあります。これは市場に期待される価格シグナルを維持しつつ、企業のコスト負担を先送りする構造です。ここでの隠れた前提は「猶予があれば企業は自主的に脱炭素投資を進める」という仮説ですが、実際には排出権価格の安定がなければ長期投資の判断ができず、かえって様子見を促すリスクがあります。あるいは、この猶予を活用して企業が技術革新を加速する可能性も残されています。現時点での構造は「物語(猶予による公正な移行)が実体(排出削減の遅れ)を覆い隠す形で期待(市場の過敏な反応)を調整している」と言えます。次の観測点は、この見直しを受けて2026年以降の排出権価格がどの水準で安定するかであり、それが制度の実効性を測る試金石です。