制度・政策

「原発に税金投入を!」参院の野党質問で赤沢経産相の答弁は

2026-07-17
参院で原発への税金投入に関する質疑応答があり、赤沢経産相が公的融資の仕組みについて答弁した

専門家の視点

参議院経済産業委員会での電気事業法改正案をめぐる議論は、原発建設への公的関与の形を問う場となりました。立憲民主党の古賀氏が「真水(財政出動)」の必要性を指摘したのに対し、赤沢経産相は貸し付け制度と容量市場・長期脱炭素電源オークションの「両輪」で投資促進を図る方針を述べ、財政出動には踏み込みませんでした。 ここに構造的な論点があります。政府は原発建設を促進するため、長期脱炭素電源オークションや公的融資という制度的な「実体」を整えています。しかし、投資回収の予見性が低いという電力会社側のリスク認識(実体)に対して、貸し付けではリスクを転嫁できないという指摘が上がっています。つまり、実体(制度)はあるものの、その実体が事業者の行動変容を引き起こせるかという点で「物語」と「現実」にズレが生じている構造です。 この議論の隠れた前提は「原発は投資リスクを低減すれば建設される」という仮定です。しかし、建設コストや廃炉費用の不透明性、金利上昇といった物理的・経済的制約は、制度だけでは解決できない可能性があります。古賀氏の「真水」要求は、このリスクを公的負担で吸収せよという問いですね。

参議院経済産業委員会で答弁する赤沢亮正経済産業相=2026年7月9日、参院の公開動画から 「政府が大規模電源を必要としているのであれば、真水(財政出動)の支援も必要ではないか」「(原発への公的融資は)電気料金の高騰を招くのではないか」。原発など大型電源の建設に政府が公的融資を行う電気事業法改正案をめぐり、参議院経済産業委員会でこんな質問が出た。赤沢亮正経済産業相は何と答えたのか。 高市政権が目指す「原発への公的融資」を盛り込んだ電気事業法改正案は、衆議院で2026年6月25日、共産党を除く賛成多数で可決したのに続き、参議院でも7月17日、共産党、れいわ新選組、社民党などを除く賛成多数(賛成227、反対16)で可決し、成立した。 6月の衆院経産委に続き、7月の参院経産委では、どんな議論が交わされたのか。まず、冒頭の「真水」について質問したのは、立憲民主党の古賀之士氏だ。 原発などへの公的融資は、電力会社が加盟し、全国の電力需給を調整する国の認可法人「電力広域的運営推進機関(広域機関)」を通じて、原発など大型の脱炭素電源を建設する電力会社に政府が必要な資金を貸し付ける制度だ。 貸し付ける資金は財政投融資(財投)のほか、電力取引で生じた収益を基に新たに創設する補助金が財源となる。財投とは政府が国債の一種である財投債を発行して資金を調達し、民間では対応が困難な大規模プロジェクトなどに資金提供することだ。 古賀氏は7月9日の参院経産委で「財投は貸し付けになるため、事業の投資回収の予見性が低ければ、(電力会社は)投資に至らないのではないか。貸し付けがあっても投資を回収する見込みがなければ民間会社は投資をしない。金利が上がっている中で、政府が大規模電源を必要としているのであれば、真水の支援も考える必要があるのではないか」と質問した。 ここでいう「真水」とは、政府が公共事業などで必要な資金を税金から直接支出(財政出動)することだ。公共事業の補助金などがこれに当たる。古賀氏の質問は、原発など大規模電源の建設に必要な資金を財投から貸し付けるのではなく、建設費の一部を税金から補助金として支給すべきではないかということだ。 古賀氏は福岡県の出身で、福岡放送のアナウンサーを経て、現在は立憲民主党の経済産業部会長と参院経産委の理事を務めている。 赤沢経産相は「電気事業者に投資を促すためには、投資回収の予見性の確保が重要であることはご指摘の通りだ。電源への投資は投資回収の予見性を確保し、新規投資を促すために容量市場や長期脱炭素電源オークションといった制度を整備している。投資段階における長期かつ大規模な資金調達を支援する貸し付け制度が両輪として働いて、大規模な電源の投資を促進していけると考えている」と答弁、財政出動については言及しなかった。 容量市場は将来必要となる電力を取引する制度で、長期脱炭素電源オークションもそのひとつだ。原発はじめ「脱炭素大型電源」の建設費などを電気料金で支援する。23年度に始まった同オークションは再生可能エネルギーよりも原発が多く落札し、「名前だけ聞くと、再エネを普及させる制度と思う人が多いだろうが、実態は脱炭素に名を借りた原発優遇制度だ」と大島堅一・龍谷大教授(環境経済学)は指摘する。これまで本欄でリポートしてきた通りだ。 これまで政府は長期脱炭素電源オークションや今回の公的融資など、事実上、原発の建設を支援する仕組みを整えてきた。これに加えて、税金を原発の建設に投じる仕組みの創設は賛否両論を呼ぶのは必至で、赤沢経産相も「財政出動が必要だ」とは答えられなかったのだろう。 赤沢経産相の答弁後、古賀氏は「金利もどんどん上がってきている状況なので、… 1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。

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