再エネ・技術

大型リチウムイオン電池、2040年・63兆円の市場規模に - ニュース

2026-07-17
大型リチウムイオン電池の市場規模が2040年に63兆円に達するという予測を報じている

専門家の視点

大型リチウムイオン電池市場が2040年に63兆円へ拡大するという予測は、脱炭素と自動運転の物語が先行した典型的な構造です。実体として、現時点の電池製造能力や原材料供給、リサイクル技術の成熟度はこの規模に追いついていません。特に、リチウムやコバルトなどの資源制約、地政学的リスク、そして生産工程でのCO2排出量の削減という課題が未解決のまま、市場期待だけが膨らんでいます。 物語では、カーボンニュートラルとSDVが自動車産業の未来として強調されますが、誰が実際に63兆円分の電池を生産し、誰がそれに対応する充電インフラや電力網を整備するのか、という実行レイヤーが明確ではありません。記事は予測を事実のように扱っていますが、それは多くの前提条件(技術進歩、投資の継続、規制の安定)に依存したシナリオです。 この構造の問題は、期待先行で市場が走りすぎている点にあります。投資家や政策立案者が「63兆円」という数字に基づいて意思決定を急ぐと、供給過剰や資源バブルのリスクが高まります。次の観測点は、この市場規模の実現可能性を左右するリサイクル技術の実用化時期と、主要鉱山の開発スケジュールです。

富士経済(東京都中央区)は7月14日、一次電池および二次電池の世界市場の調査結果を発表した。それによると、電気自動車(EV)やその他のモビリティ、定置型蓄電システムなどの大型用途向けリチウムイオン二次電池市場は、2026年に31兆4738億円、2040年には63億2550億円まで成長すると予測する。 同市場は、2025年にEVの伸長鈍化が懸念されたものの、底堅い伸びが見られた。今後は主要自動車メーカーによるEV新車発売や、中国におけるEVの順調な普及で、EV向けを中心に引き続き伸長が予想される。カーボンニュートラル実現の観点や、自動運転やソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV=ソフトウエア更新によって機能が向上する自動車)などの機能もEV普及を後押しする。 2030年以降は、EVに加えて、再生可能エネルギーの更なる普及に伴い、家庭・産業向け、系統用や再エネ併設などで定置型蓄電システムの需要が高まる。さらに、リチウムイオン電池のコスト低下や環境規制の強化を受け、建設機械などの産業車両や船舶を中心に電動化が進むとみられる。 また、固体リチウムイオン電池市場は、2026年に3657億円(内訳は全固体型が115億円、半固体型が3542億円)、2040年には3兆5435億円(同2兆3251億円、1兆2184億円)まで成長すると予測する。2023年以降、中国では車載向けや定置型蓄電システム向けで酸化物系半固体型の実用化が進んでおり、日本でも耐熱性の高さを生かしてFA機器向けの硫化物系小型全固体リチウムイオン電池の実用化が進んでいる。 自動車メーカー各社は、全固体リチウムイオン電池を搭載したEVの実用化計画を発表している。2027年以降、日本・中国・韓国を中心にグローバルで展開し、2030年前後には車載向け全固体リチウムイオン電池の採用が本格化する見通し。初期は液系リチウムイオン電池より高価格のため高級EVでの採用とみられるが、生産量の増加に伴い普及価格帯のEVや物流用ドローン(無人小型飛行体)、港湾内特殊車両などでの採用も増加する。2030年代後半には、高電位正極活物質や高容量負極活物質を取り入れ、さらにエネルギー密度が高まると予想される。 このほか、一次電池市場は、2026年に1兆3982億円、2040年に1兆2588億円と予測する。電池交換頻度の少ない用途では低コストかつ信頼性が高い一次電池の需要が根強いが、今後は電化製品の高機能化に伴う消費電力の増加などにより二次電池への代替が進み、市場は縮小すると見られる。企業淘汰や再編が進むが、医療機器やセンサーなどで使用される高価格電池の需要は続くため、参入メーカーの収益性向上が期待される。 二次電池市場全体では、2026年に42兆3830億円、2040年に80兆342億円と予測する。EV向けなど車載需要は底堅く今後も伸びが期待され、蓄電所や再エネ設備、AI(人工知能)データセンター関連に設置する定置型蓄電システム向けが急伸している。今後は、これらに加えてエネルギー密度の向上などにより空飛ぶクルマ(eVTOL)やロボット、高高度プラットフォームステーション(HAPS)など新たなモビリティや用途への展開が予想される。 Copyright 2026 Nikkei Business Publications, Inc. All rights reserved. このページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。著作権は日経BP、またはその情報提供者に帰属します。 掲載している情報は、記事執筆時点のものです。

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