スペースX、ESG評価は最低ランクの「CCC」、国内外ESG投資家の反応は
専門家の視点
スペースXのESG最低評価「CCC」を巡る報道は、期待先行と実体欠落が同居した構造を示しています。まず実体として、MSCIの評価は宇宙ロケットという事業の環境負荷ではなく、労働環境やガバナンス(二重議決権株式、テキサス州登記による株主権限の制限)という測定可能な事実に基づいています。しかし物語では、マスク氏が「電動ロケットは不可能」とESG評価の枠組み自体を否定し、評価基準と事業内容のズレを話題にすり替えています。ここには目的(宇宙開発の推進)と経路(ESG基準への適合)の非対称性が明確です。一方、期待レイヤーでは、上場直後の時価総額2.6兆ドルから1.7兆ドルへの急落が示す通り、投資家はマスク氏の物語に一度は飛びついたものの、ESGリスクを織り込み始めています。隠れた前提は「ESG評価が株価に直結する」という点です。実際にはスペースXの事業自体は国防総省やNASAとの契約で収益基盤が異なるため、ESG投資家の離脱と一般投資家の動きは必ずしも連動しません。
米宇宙企業のスペースXは、上場後約1カ月で株価がIPO時の公募価格を一時下回るなど、その行方に注目が集まる。同社に関しては、上場直前の6月11日に、ESG評価機関のMSCIが最低評価の「CCC」を付けた。スペースXがESG評価機関から低評価を受けた理由は何か。また国内外のESG機関投資家はどのように見ているのか、反応を探った。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子) 米富豪イーロン・マスク氏が創業しCEO(最高経営責任者)を務めるスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)の株価が失速している。 同社は6月12日、公開価格135ドル(約2万1900円)で米ナスダック市場にIPO(新規株式の公開)を果たした。上場初日の取引で株価は19%上昇して時価総額は2.1兆ドル(約340兆円)に達し、同社を率いるイーロン・マスク氏の資産総額も1.4兆ドル超(約227兆円)に膨れ上がり、マスク氏は世界初の「トリリオネア」となった。 しかし約1カ月が経った7月15日、終値はかろうじてIPO価格を上回ったものの、取引時間中には一時132.28ドル(約2万1460円)まで下落し、IPO価格を割り込んだ。上場直後の6月には、壮大な事業構想とマスク氏の後ろ盾を背景に、同社の時価総額は一時、マイクロソフトやアマゾン社を上回り2.6兆ドル(約421兆円)を突破したが、15日午後には1兆7800億ドル(約288億円)まで減少した。 ESG評価機関のMSCIは、IPO前日の6月11日、スペースXにESGレーティング「CCC(トリプルシー)」を付与した。MSCIが「AAA」から「CCC」まで評価する7段階のうちの最低評価だ。 MSCIは企業だけでなく国に対しても格付けを行っており、最低評価の「CCC」は、2022年にウクライナを侵攻したロシアに対しても付与されている。海外メディアはこぞって「スペースXのESG評価はロシア並み」と報じた。 MSCIでの「CCC」格付けは、管理措置が「極めて不十分」で、現在または直近において「重大な」ESGをめぐる論争に関与した企業に付与される。具体的に、スペースXは、MSCIの「論争(controversies)」スコアが10点満点中1点で、1つ以上の深刻な論争に直接または間接的に関与しているとみなされた。「ガバナンス」に関するスコアも、10点満点中3.2点だった。 この格付けを受け、マスク氏は「X」に、「残念ながら電動ロケットは不可能だ」と投稿した。マスク氏はかつて、自身が率いるEV企業のテスラ社が、S P500のESGインデックスから除外されたときにも、ESGは「詐欺だ」と述べて非難したことがある。テスラ社の除外理由は、カリフォルニア州のテスラ社工場における人種差別や劣悪な労働環境の指摘を受けてのことだった。なおテスラ社は2023年、ESGインデックスに再び組み入れられた。 ■ESG投資家は、ESG評価の低い企業に投資するのか■スペースXが抱える「論争」は数多■「二重議決権株式」というガバナンス上の懸念も■株主提案や株主集団訴訟を避け得る「テキサス州登記」■「積極的に回避すべき企業」と英ESG投資家 オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。
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