排出量算定

エコデザイン規則(ESPR)の基本構造と日本への影響:EUは「グリーン鉄」をどう評価するのか

2026-07-16
EUのエコデザイン規則(ESPR)の基本構造と、日本企業への影響、特にグリーン鉄などの評価方法について解説

専門家の視点

EUのエコデザイン規則(ESPR)が鉄鋼製品の環境性能をA~Eのクラスで示す仕組みを検討している背景には、クリーン産業ディールで掲げる「CO₂排出の少ない製品が市場で選ばれる仕組み」の具体化があります。ここで重要なのは、化石燃料を用いる製鉄ルートが上位クラスに入る可能性が排除されていない点です。つまり、排出量単一指標では資源循環やエネルギー利用の総合的な環境価値が正確に反映されず、実体と物語の間にズレが生じる構造があります。 日本の鉄鋼業にとって、この評価枠組みはCBAM対応以上に、公共調達や低炭素鋼材市場で自社製品の価値を証明する手段として機能します。特に2030年に向けて大型電炉で生産される高品質鋼材を「低CFP鋼材」と評価されるかどうかは、期待先行で市場が走りすぎるリスクと、実体が翻訳されないリスクの両方を含みます。 現時点での核心は、EUが提案する評価方法が実体(実際の排出量削減)と整合しているかではなく、日本企業が自社の技術とデータをどのようにこの枠組みに翻訳するかにある。

EUのクリーン産業ディールでは、CO₂排出の少ない製品が市場で選ばれる仕組みをどのようにつくるかが重要な課題となっています。今年3月に提案された産業加速法でも、公共調達や公的支援において排出量の少ない素材を優遇する仕組みが議論されており、その基準となり得るのが、エコデザイン規則(ESPR)の枠組みにおける鉄鋼製品の環境性能評価です。 現在、鉄鋼製品のカーボンフットプリント(CFP)を算定し、環境性能をAからEまでのクラスで示す仕組みが検討されています。一方で、化石燃料を使う製鉄ルートが上位クラスに入り得ることや、排出量だけで資源循環やエネルギー利用を十分に評価できるのかが議論となっています。 エコデザイン規則に基づく鉄鋼製品の環境性能評価は、日本の鉄鋼業に新たな課題と機会をもたらします。製品ごとの実際の排出量を把握することは、炭素国境調整措置(CBAM)への対応だけでなく、公共調達や低炭素鋼材市場で日本製品の価値を示すためにも重要です。特に、2030年に向けて大型電炉で生産される高品質な鋼材を、実際に排出量の低い「低CFP鋼材」としてどのように評価し、市場につなげるかが問われます。本稿では、EUによる鉄鋼評価の仕組みと論点を整理し、日本企業がこうした政策展開をどのように活かせるのかを考察します。

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