検証CCS: 本当に使えるコストになるのか、誰が漏えい責任を持つのか
専門家の視点
経産省が掲げるCCSコスト6割削減目標は、技術革新と設備大型化で達成可能とする「物語」が先行しています。しかし、実体としてCO2回収率が90%未満に留まり、回収設備自体が大量のエネルギーを消費するため発電効率が低下するという物理制約が存在します。さらに、火力発電の燃料費を含めたシステム全体の経済合理性が再生可能エネルギーに及ばないという「実体」が、大島教授の指摘で明確になりました。 この記事の核心は、CCSを「回収・輸送・貯留」という部分最適で語る物語と、火力発電システム全体で評価すべきという実体との間にズレがある点です。また、CO2漏えい時の責任の所在が誰かという制度設計の未整備も、実体欠落の構造を生んでいます。期待のレイヤーでは、経産省の目標に投資や国民の関心が先行していますが、コスト低下が不確実で漏えい責任が不明確なままでは、社会的受容性が得られず期待が先行しすぎるリスクがあります。 結論として、CCSは「最後の手段」という位置づけながら、現時点では物語先走りの構造であり、火力発電システム全体のコストと回収率の物理限界を直視した制度設計と、責任の明確化が不可欠です。
経済産業省は2050年カーボンニュートラルの実現に向け、二酸化炭素(CO2)を回収して地下に貯留する「CCS」の本格導入を進めるが、最大の課題はコストだ。経産省は現在、回収・輸送・貯留を合わせて1トン当たり1万2800~2万200円とされるCCSコストを、2050年までに6割以上削減する目標を掲げる。だが、本当に産業界が広く活用できる水準まで下げられるのだろうか。(オルタナ輪番編集長=池田真隆、北村佳代子、オルタナ副編集長=京正裕之) 「回収・輸送・貯留のコストは下がるかもしれないが、CCSのコストは火力発電に掛かるコストも含めて見るべきだ。火力発電の燃料費が加わると経済合理性が出るはずがない」――。環境政策に詳しい龍谷大学政策学部の大島堅一教授は、CCSの経済性に根本的な疑問を投げ掛けた。 ■「CCS単体」ではなく「火力発電全体」で考えるべき 経産省は、CCSコストについて、技術革新や設備の大型化、輸送網の整備によって大幅に低下すると試算する。しかし、大島教授は「CCS設備だけを切り出して議論すること自体がミスリーディングだ」と指摘した。 CCSは火力発電所や製鉄所などから排出されるCO2を回収する技術であり、その前提には化石燃料の利用がある。さらに、CO2の回収設備は大量のエネルギーを消費するため、発電効率も低下する。 大島教授は「回収・輸送・貯留のコストだけを見れば将来的に下がる可能性はある。しかし、火力発電というシステム全体で見れば、再生可能エネルギーと競争できる経済合理性は期待できない」と言い切った。 加えて、高性能な設備でもCO2回収率は概ね90%程度にとどまり、設備によっては50%程度しか回収できないケースもあるという。「CCSを利用しても必ず回収し切れないCO2が残る。CCSだけでカーボンニュートラルを達成できるわけではない」と大島教授は強調した。 ■漏えいリスクと「誰が責任を負うのか」■代替手段が確立された電力分野でなぜCCSなのか■海外でもコストと安全性に疑問の「声」相次ぐ■世界のCCS、その多くは石油増産と一体に■削減ポテンシャルは「最後の手段」 サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。
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