熊本で生物多様性の国際会議、安易なオフセットよりまず「回避」を
専門家の視点
国際自然保護連合日本委員会が熊本市で開催した生物多様性の国際会議では、安易なオフセット(代償措置)より「回避」を優先すべきだという主張が提起されました。この構造の核心は、生物多様性損失に対する企業の対応に「物語先走り」のリスクが潜んでいる点です。実体としては、多くの企業が開発事業で生物多様性への影響を「オフセットで帳尻を合わせられる」と捉え、回避・低減のプロセスを軽視する傾向があります。一方、物語として「自然資本への投資」や「ネイチャーポジティブ」が掲げられても、具体的な影響評価の手順や第三者検証の仕組みが伴わない場合、オフセットは実質的な代償にならず、企業の姿勢だけが先行する形になるのです。期待のレイヤーでは、投資家が生物多様性開示を求める一方で、地域社会やNGOは「回避」という最も基本的な行動を軽視する企業姿勢に厳しい目を向けています。ここでの隠れた前提は「オフセットは技術的に代替可能である」という考え方ですが、生態系の複雑性や時間軸を考えれば、回避できない損失は取り戻せないという厳しい現実があります。
国際自然保護連合日本委員会などは7月14~15日、生物多様性をテーマにした国際会議を熊本市で開いた。最終日の15日には、自然資本の損失を食い止め、回復軌道に乗せる国際目標「ネイチャーポジティブ」実現への決意を表明した「熊本宣言」を発表した。熊本宣言では、すべての企業に対して、安易なオフセットに頼ることなく、自然資本への悪影響を最大減回避することを目指す「ミティゲーションヒエラルキー」の考え方を導入するように求めた。(オルタナ輪番編集長=池田真隆) 国際自然保護連合日本委員会などが主催した国際会議の名称は、「グローバル・ネイチャー・ポジティブ・サミット2026」。熊本市で開いたことで、「熊本国際会議」とも名付けた。環境省や農水省などが共催で、2日間で2725人が来場した。 カナダ・モントリオールで2022年12月に開いた国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、「昆明・モントリオール生物多様性枠組み(KMGBF)」を採択した。KMGBFでは、2030年までに「ネイチャーポジティブ」を国際目標として定めた。同目標は、自然損失を食い止め、反転させることを目指したものだ。 この国際目標の達成期限まで残り4年に迫るが、熊本国際会議では同目標の実現可能性について強い危機感を示した。最終日の15日には、ネイチャーポジティブ実現への決意を表明した「熊本宣言」を発表し、80以上の団体が同宣言に署名したという。 ■「ミティゲーションヒエラルキー」を企業行動の根幹に 熊本宣言で、企業行動の根幹に置くべき考えとして強調したのが「ミティゲーションヒエラルキー」だ。ミティゲーションヒエラルキーとは、事業活動が生物多様性に与える悪影響を最小限に抑えるための意思決定フレームワークだ。優先度の高い順に以下の4段階からなる。 4段階のうち、最優先に置くのが、「回避」だ。生態学的に脆弱なエリアでの開発を避け、悪影響そのものを最初から発生させないことを重視する考えだ。 回避の次に優先するのが「最小化」だ。どうしても回避できない影響について、実施時期の調整などで、その規模や影響度合いを小さくすることを目指す考えだ。 最小化の次に優先するのが、「回復・復元」だ。事業によって、一時的に損なった現地の生態系を元の状態に修復することを目指す考えだ。 ミティゲーションヒエラルキーが最後の選択肢として提示するのが「相殺/オフセット」だ。「回避」「最小化」「回復・復元」の3ステップを尽くしても残ってしまう不可避の「残留影響」に対し、別の場所でそれと同等以上の保全活動を行うことでオフセットすることを最終手段として勧めた。 企業の環境活動において、「損失した分を他の地域で植林して補う」といった安易なオフセットが批判の対象となってきた。同宣言では、「まずは徹底して損失を避ける(回避する)」というプロセスをすべての企業に求めた。 最初から安易なオフセットに頼るのではなく、段階に沿った厳格なアプローチをとることが、ネイチャーポジティブ達成への最低条件として定義した。 熊本宣言「ネイチャーポジティブな未来に向けた熊本の決意」日本の熊本で開催された第 2 回グローバル・ネイチャーポジティブ・サミットに参加した我々は、昆明・モントリオール生物多様性枠組み(KMGBF)の使命に沿い、2020 年を基準として 2030 年までに自然の損失を食い止め、その傾向を逆転させ、2050 年までに完全な回復を達成するための行動を加速させる上で、間もなく開催される生物多様性条約第 17 回締約国会議(CBD COP17)が極めて緊急の課題であることを認識します。世界的な目標達成まで残りわずか 4 年となった今、国際的な合意から着実な行動へと移行するためには、政府、市民社会、先住民族および地域コミュニティ、企業、金融機関、市民、消費者を含む、社会を構成するすべての主体をつなぐ、かつてない「社会全体を巻き込んだアプローチ」が求められています。 熊本は、この取り組みにふさわしい舞台です。この地域は、自然が経済活動、地域住民の生活、食料安全保障、文化遺産、災害リスクの軽減、コミュニティのレジリエンスをいかに支えているかを深く理解しています。また、政府、企業、金融、社会セクターが連携して行動することで、地球と現在および将来の世代の人々にとって、ネイチャーポジティブな成果をもたらすことができることを示しています。例えば、地下水や河川流域の管理を通じて、この地域は、都市部、企業、農業コミュニティが連携し、生物多様性の重要な要素である共有の自然資源や生態学的プロセスを保全できることを実証しています。 ネイチャーポジティブな社会への移行がもたらす社会的・経済的メリットは明らかです。ネイチャーポジティブ経済への移行は、
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