関電、水素製造装置の劣化予測、水素発電の成果活用 - ニュース
専門家の視点
水素製造装置の劣化予測手法の開発は、実証運転という実体データとAI予測技術を組み合わせた着実な前進です。しかし、この技術の狙いは「水素発電の知見を活用」と説明されており、ここに構造的な注意点があります。水素発電はまだ商用規模で動いておらず、コストや供給インフラの実体が整っていない段階です。装置の劣化を見張る技術が先行する一方で、その装置自体を動かす水素がどこから来て、どの価格で調達されるのかという経済合理性の実体がまだ明確ではありません。結果として「装置維持は可能だが、燃料としての水素が不足する」という、産業の上流と下流の時間軸の非対称性が浮かび上がります。この構造は典型的な「物語先走り」の形です。劣化予測は運用効率化には有効ですが、GX全体の物語の中で水素発電が果たす役割が固まっていない現状では、技術が単体で浮いてしまうリスクがあります。次に見るべき観測点は、この予測技術が実際の商用プラントの導入判断や投資回収計画にどう結びつくかです。技術の粒度と事業の粒度が一致しなければ、設備保守の話だけで終わる可能性が高いです。
関西電力は7月13日、AI(人工知能)と水素製造装置の実証運転データを組み合わせて、水素製造設備の運用判断を支援する劣化予測手法を開発したと発表した。同手法を活用することで、水素製造量と設備負荷のバランスを考慮した運用を検討できるという。 同社は、2040年のありたい姿として「大規模水素サプライチェーンの構築・他産業展開を実現し、水素社会の実装・拡大を力強く牽引する」ことを掲げる。この実現には水素製造装置を効率的に運転して水素製造コストを低減するとともに、競争力のあるサプライチェーンの構築が重要になる。一方で、水素製造装置は、起動停止や負荷変動などにより劣化し、水素製造効率が低下するといった課題があった。 今回構築した手法は、生成AIを支える機械学習による運転データのパターンや特徴の学習に、起動停止や負荷変動における装置の挙動などの運用で得られた知見を反映することで、水素製造装置の状態変化や劣化の兆候を予測する。データ駆動型多目的最適化制御を専門とする大阪大学大学院工学研究科特任研究員の馬越龍太郎氏の支援のもと開発した。 同社が2025年に実施した姫路第二発電所における水素混焼発電実証で得られた水素製造装置の運転データを活用した。同実証では、事業用大型ガスタービンを活用した混焼率30%(体積比)の水素混焼発電を日本で初めて達成した(図1)(図2)。 劣化予測に基づき、水素需要や設備状態を考慮した最適な運用・保全計画、ライフサイクルを考慮した評価・投資判断、需要変動に合わせた運用計画の最適化を支援する。これにより、設備の稼働率向上や劣化を抑制するとともに、水素製造コストの低減によりプロジェクト全体の競争力の向上が期待されるという。 今後は、実プロジェクトでの運用を通じて、モデルの実効性を検証し精度を向上させる。また、水電解装置メーカーなど関係者と連携し、継続的にデータを蓄積してモデルの精度や汎用性能を向上させる。水素製造から輸送・利用までを見据えて運用し、水素サプライチェーン全体を最適化するとしている(図3)。 Copyright 2026 Nikkei Business Publications, Inc. All rights reserved. このページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。著作権は日経BP、またはその情報提供者に帰属します。 掲載している情報は、記事執筆時点のものです。
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