SBTiの新しい企業ネットゼロ基準:スコープ3算定を超え、脱炭素が事業価値になる世界へ
企業のGX対応事例として、現場で何が求められるかを知る手がかりになります。
専門家の視点
SBTiの新しいネットゼロ基準は、スコープ3を含む全面算定を求めていますが、その背後にある「脱炭素が事業価値になる」という物語と、企業の実行能力との間に明確なズレが存在します。実体としては、多くの企業がスコープ1・2の削減にも苦戦しており、サプライチェーン全体のデータ収集や排出量削減の技術的・経済的ハードルは依然として高いのが現状です。この基準は理想的なゴールを提示する一方で、「誰がどのように実行するのか」という実行レイヤーが具体的に設計されていません。特に中小企業を含むサプライヤーに対する支援策や、削減目標の達成が困難な場合の現実的な代替経路が欠落している点が問題です。 ここで問い直したいのは、「脱炭素が事業価値になる」という前提そのものです。厳格な基準を満たすことが、短期的なコスト増を上回る便益を必ずしも保証するわけではありません。市場からの期待は高まっていますが、実体が追いつかない場合、企業は報告疲れや目標未達による評判リスクに直面します。