農水省の唐突なソーラーシェアリング規制で混乱も: 遮光率3割の壁(上)
専門家の視点
ソーラーシェアリングに「遮光率3割未満」という一律基準が示されましたが、現場の実態はこれと大きく乖離しています。ミカン栽培では温暖化対策として3割以上の遮光がむしろ有効であり、茶葉や水稲でも同様の事例が報告されています。農水省の指針は「収穫量8割」という成果基準を維持しつつ、新たに外形基準を追加した形ですが、この外形基準こそが現場の創意工夫を狭め、かえって耕作放棄を増やすリスクをはらんでいます。 ここで構造的に見逃せないのは、物語(「健全な農業を守る」という説明)と実体(温暖化適応には遮光が必要という農学的事実)のずれです。基準の目的は不正防止にあるはずが、蒸し暑い水田で熱中症リスクを負う農業従事者の現実が置き去りにされています。また、実行レイヤーである農業委員会には、遮光率の分母や測定方法の運用判断が委ねられたままです。 ソーラー発電への逆風は里地里山でも強まっており、防災・景観・排外主義的な要素が混ざり合っています。問題の本質は、再生可能エネルギーと土地利用を「対立軸」で語る物語そのものにあります。
■小林光のエコ眼鏡(54)■農林水産省は4月、ソーラーシェアリングの新たな目安として「遮光率3割未満」を示した。しかし、作物や気候条件によっては3割以上の遮光があったほうが最適なケースもあり、一律の基準には疑問が残る。自然と共生しながら農業を支える太陽光発電の可能性を探る。(東大先端科学技術研究センター研究顧問・小林 光) ■あらまほしき農業の強要はひいきの引き倒しにならないか 2026年4月15日に農林水産省の「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」は、いわゆるソーラーシェアリングを行うための農地転用許可を発給することに関する各地の農業委員会の判断の目安になる指針を発表した。6回の審議を経た結果という。ここではまず、その内容について若干苦言を呈したい。 指針の要旨は、これまでの耕作に支障のない支柱設置などの構造に関する指針に加え、重要なメルクマールであった収穫量の基準、すなわち近隣農地における同種作物の同種の栽培法で期待できる収穫量の8割を得られるものであることという点を維持しつつ、新たにソーラーパネルによる遮光率についても目安を設けた。そして、その遮光率は3割未満だということである。 読ませていただいたとき、現場では混乱が起きようと想像された。例えば、耕作地の29%でパネルを敷き詰めて完全に遮光してもいいのか、また分母は畔を含めた農用地全部なのか、隣の農地も発電する人が耕作していれば分母に含めるのか、といったオペレーショナルな定義が示されていなかったためだ。 また、そうした定義の問題よりも、むしろ心配になったのは「作物の種類を問わずに遮光率を3割未満と決めてしまっていいのだろうか」ということであった。 この指針が出される前に、神奈川県小田原市や開成町などでソーラーシェアリングを進めている、小田原かなごてファームの農場で、耕作と発電に当たる小山田氏に話を聞いた。例えば、ミカンでは、近年の気温上昇により、むしろ3割を超えた遮光を行わないと実りが悪く、実っても味が落ちる由で、ミカン園での発電は、温暖化への適応策となっていて一石二鳥の効果があるということだった。 遮光が必要な作物は、ミカンだけではない。今を時めく抹茶づくりのために玉露用の茶葉を作るのにも遮光は必須だ。農用地のボリュームゾーンである水田ですら、今や遮光をしないと、稲の温度が上がり過ぎ不都合が生じると聞く。そもそも農業従事者の熱中症対策が必要にもなっている。もちろん、太陽光発電で稼ぎたいばかりに、収穫もする気がない作物を植えて放置しておく、といったことは論外だ。そうした土地は正面切って農地転用させるか、あるいは耕作放棄の荒廃農地、ゆくゆくはハンノキ林になってしまっても、変な太陽光パネルが置かれるよりまだマシだと地域社会が甘受するか、判断すれば良いだろう。 しかし、農業もそれなりにできるという物理的な条件をわざわざ狭くしてしまい、結果的に耕作放棄地を増やし、農業を衰退させ、里地里山地域の人口をさらに減らしてしまうのはいかがなものかと思わざるを得ない。農業についての勝手な理想を押しつけて、挙句に、ひいきの引き倒しになっているように思わざるを得ない。 そうした失敗を避けるためには、基準は、遮光率といった外形に関する統制的なものではなく、従来の成果の基準、それも、収穫高よりは農業収益についての基準の方が創意工夫を発揮させてよいのではないだろうか。 最近、太陽光発電に逆風が吹いているのは農地だけではない。里地里山に敷き込まれている太陽光パネルにも、防災上の、自然保護あるいは景観上の批判が寄せられ、数多くの自治体で、メガソーラーの立地規制を進める条例が制定されるようになった。土地財産権への強い制約になる可能性があるため、法律上の対応も必要ではないかということで、国においても各省会議が設けられ、規制強化の検討が進んでいる。 メガソーラーへの反対には、「中国製だからけしからん」などといった排外主義的な感情にこびを売るものや、クマが追い出されて市街地へ降りてくるといった市民の不安をあおる言説もある。だが、そうした江戸の仇を長崎でのような屈折した議論は脇においても、ソーラー発電は真正面から見てやはり悪なのであろうか。 そうした関心から、いくつかのメガソーラーを訪問したり、あるいは設計や運営に当たった事業者の話を聞いたりした。結果、多くの観点から見てもなお是認できる、優秀なソーラー発電サイトも十分あり得るように思えた。いくつか紹介しよう。 ■釧路町のメガソーラーはタンチョウなどとの共存 まず訪問したのはメガソーラー問題が激化するいわばきっかけとなった北海道釧路市のすぐ隣、釧路町に、スマートソーラー社が2020年3月に開設した事業用FIT発電所。その出力は26MW、パネル積載量では34MW
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